新型ウイルスの影響による食の変化 〜テイクアウトは利用され続けるのか?〜

レポート 2020年7月16日

こんにちは、NOB DATA株式会社インターン生福岡大学3回生の横溝です。新型ウイルスの影響を受けネガティブな状況が続いている中でも、皆さんが日頃使っている検索データの中にプラスになっていることがないかと考え、ヤフーのDS.INSIGHTを用いたデータ分析を行いました。

今回のテーマは、人間の三大欲求である食欲「食」についてです。食の中でも、今回の新型ウイルスの影響が大きい「テイクアウト」に注目してみました。
テイクアウトは緊急事態宣言後に検索ワードとしても急上昇しましたが、解除後に需要は減っているのではないかという意見も存在します。

その上でヤフーの提供するDS.INSIGHTを利用し、テイクアウト関連の検索数データから、その実態を定量化できないか調査してみました。 具体的な調査内容としては国内のテイクアウト検索の動向、また3県におけるテイクアウト検索推移や特徴度、関連キーワードランキングの比較です。

DS.INSIGHTとは
ヤフーが所持している行動ビッグデータを分析できるツールのこと。このツールを用いることで、ヤフー利用者の検索数やキーワードの関連性、位置情報データをもとに移動状況などを可視化することが可能。
https://ds.yahoo.co.jp/insight/

 

 

テイクアウト検索数推移からわかったコロナ後の変化
この調査でわかったことが2点あります。

テイクアウトの検索数推移は緊急事態宣言の約2週間後をピークに減少
一方で緊急事態宣言解除後も昨年を超える検索数で推移し、テイクアウトの一定のニーズが伺える
テイクアウト検索推移の動向と属性別調査
初めに日本国内のテイクアウトの動向を確認してみます。

図1:「テイクアウト」検索推移(出典:ヤフーDS.INSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

 

図2:「テイクアウト」直近検索推移(出典ヤフーDS.INSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

表1:「テイクアウト」検索推移(出典ヤフーDS.INSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

新型ウイルスの脅威が人々に認知され始めた3月末から4月7日の緊急事態宣言時でテイクアウト検索推移は大幅に増加し、4月27日の週の検索数が最高値の54,300人に到達しました。 5月14日に緊急事態宣言が解除されてから検索推移は減少しています。(図2、表1参照)

 

図3:「テイクアウト」共起ネットワーク(出典:ヤフーDS.INSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

図3はテイクアウトの共起ネットワークを表しています。共起ネットワークは、検索された単語の数を円の大きさで、また単語と単語の関係性を線で表現します。

今回の例では「テイクアウト」と一緒に検索された単語として「ガスト」や「バーミヤン」などが表示されています。対象期間は2020年6月8日から2020年6月14日の一週間、エリアや性別は無条件で抽出しています。

日本国内では、円が大きいことから、青色のマーカーで示している「ガスト」がテイクアウトと一緒に検索されていることがわかります。また赤色が多いことから女性の割合が高いことも把握できます。

次に、テイクアウトの検索傾向をセグメント別に把握する為、属性別テイクアウト検索推移の割合を確認してみます。対象期間は共起ネットワークと同じです。

 

図4「テイクアウト」性別検索割合(出典ヤフーDS.INSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

男女比は4:6で女性の割合の方が多い傾向にあります。

 

図5:「テイクアウト」年代別検索割合(出典ヤフーDS.INSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

ボリュームゾーンを40代とすると、60代以上は20代以下よりも検索数が多くテイクアウトの需要が存在することがわかります。

 

図6:「テイクアウト」性別年齢別検索割合(出典ヤフーDS.INSIGHT データ取得日2020年6月21日)

「テイクアウト」を検索した年代は男女共に40代を中心に多く見られます。

3県のテイクアウトキーワード調査
データ結果を福岡県、東京都、岩手県の順にみてみましょう。3県を選択した理由は以下のとおりです。

福岡県→NOB DATA所在地であり、九州の玄関口として全国的にも比較対象に選ばれることが多いため
東京都→日本の首都であるため
岩手県→新型ウイルス感染者数ゼロのため(6月2日時点)※厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年6月2日版)」
全体の分析 : 3県3飲食店の特徴度と検索推移の把握
初めに、「ガスト」「ジョイフル」「やまなかや」の3飲食店の特徴度と検索推移を国内で表した図を見てみます。3飲食店を選択した理由は以下のとおりです。

ガスト→福岡県、東京都、岩手県で検索推移が1位のため(詳細は個別の分析より)
ジョイフル→3県のうち福岡県のみ関連キーワードランキングで3位のため(詳細は個別の分析より)
やまなかや→3県のうち岩手県のみ関連キーワードランキングで6位のため(詳細は個別の分析より)

図7:「3県3飲食店特徴度マップ(出典ヤフーDS.INSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

図7は各県最も特徴度が高い飲食店の色がプロットされており、エリア別で各飲食店のテイクアウトの検索推移とニーズが把握できます。対象期間は共起ネットワークと同じです。

3県を比較すると、検索推移は1位が「ガスト」です。しかし、特徴度で見ると九州では特徴度が圧倒的に高い飲食店は「ジョイフル」です。また、「やまなかや」は岩手県周辺の地域で特徴度が「ガスト」よりも高いです。

これは企業の展開の仕方の違いだと考えます。全国展開している飲食店もあれば特定の地域にしか存在しない飲食店があります(各飲食店の詳細は個別の分析で記載しています)。展開戦略によって知名度とニーズが変化します。

3県を比較してみて、大手飲食店でなくとも知名度があれば、特定地域のみの飲食店のテイクアウト商品はニーズが存在することが把握できます。

個別の分析 : 福岡、東京、岩手それぞれの検索推移と関連キーワードランキングを比較
次に、3県の検索推移と関連キーワードランキングの比較を行います。

《福岡県》

図8:福岡県「テイクアウト」検索推移(出典:ヤフーDS.INSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

図9:福岡県「テイクアウト」直近検索推移(出典ヤフーDS.INSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

表2:福岡県「テイクアウト」検索推移(出典ヤフーDS.INSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

福岡県ではテイクアウト検索推移は昨年の5月20日の週と今年の5月18日の週を比較すると、現在は昨年より12倍に増加しています。(表2参照)

 

図10:福岡県「テイクアウト」関連キーワードランキング(出典:ヤフーDS.INSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

福岡県はファミリーレストランやしゃぶしゃぶと日本料理の有名店の名前でテイクアウトが検索されています。

 

図11:福岡県「テイクアウト」関連キーワード上位3飲食店検索推移(出典:ヤフーDSINSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

 

表3:福岡県「テイクアウト」関連キーワード上位3飲食店検索推移(出典:ヤフーDS.INSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

大手ファミリーレストラン「ガスト」(福岡県内に35店舗)のテイクアウト検索数の前年比は110倍です。

九州を中心とするファミリーレストラン「ジョイフル」(福岡県内に118店舗)としゃぶしゃぶと日本料理の有名店「木曾路」(福岡県内に3店舗)は昨年のテイクアウト検索数が0の為、前年比はありません。しかし、昨年と今年の検索推移を比較すると、検索推移は増大しています。

参考までに、飲食店名の他に「北九州テイクアウトマップ(23位)」というキーワードも入っていました。北九州テイクアウトマップとは、北九州市内のテイクアウト可能な飲食店が掲載されているサイトです。

複数のテイクアウト可能な飲食店が1つにまとめられてことによって消費者も使いやすいシステムです。福岡県では、緊急事態宣言での飲食店自粛を支援する為に、他にも同様のサイトの検索クエリが出ており、支援サイト名が検索ワードとして上がっていることも印象的です。
※北九州テイクアウトマップ(https://bento-ktq.glideapp.io/)

《東京都》

図12:東京都「テイクアウト」検索推移(出典:ヤフーDS.INSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

 

図13:東京都「テイクアウト」直近検索推移(出典:ヤフーDS.INSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

表4:東京都「低空後」検索推移(出典:ヤフーDS.INSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

東京都も規模は異なりますが、福岡県と同じ傾向です。今年の検索推移は昨年より約26.36倍増加しています。(図17参照)

 

図14:東京都「テイクアウト」関連キーワードランキング(出典:ヤフーDS.INSIGHTデータ取得日:2020年6月21日)

※飲食店や地名に無関係な単語がランクインしているものは除いています
関連キーワードも福岡県と似た傾向ではありますが、東京都は地名がランクインしていません。

 

図15:東京都「テイクアウト」関連キーワード上位3飲食店検索推移(出典:ヤフーDS.INSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

表5:東京都「テイクアウト」関連キーワードランキング上位3飲食店検索推移(出典:ヤフーDS.INSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

次に東京都の今年の検索数(2020年5月18日の週)と昨年の検索数(2019年5月20の週)を比較すると、「ガスト」は85倍、「バーミヤン」は約27.8倍です。

また、2位に「木曽路」がランクインしていますが、4月18日より木曽路のメニューの中でも人気の『すきやき弁当』や『和牛あみ焼き』、『うなぎ弁当』などの豪華弁当の販売を開始したことが影響しているようです。(緊急事態宣言を受けてから生まれたテイクアウト弁当なので昨年はテイクアウト検索のワードで出てきません。)

このことから昨年と比較するとやはりテイクアウトという言葉が人々に認知され、需要は健在であることがわかります。

 

木曽路「すきやき重弁当」(C)Copyright KISOJI Co.,Ltd.

《岩手県》

図16:岩手県「テイクアウト」検索推移(出典:ヤフーDS.INSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

図17:岩手県「テイクアウト」直近検索推移(出典:ヤフーDS.INSIGHT データ取得日2020年6月21日)

 

表6:岩手県「テイクアウト」検索推移(出典:ヤフーDS.INSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

最後に岩手県ですが、今年の検索数(2020年5月18日の週)は昨年よりも90件まで増加しています。新型ウイルスの感染者数が低い県ではありますが、昨年は検索されていなかった「テイクアウト」の検索数が増加していることが分かりました。

 

図18:岩手県「テイクアウト」関連キーワードランキング(出典:ヤフーDS.INSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

岩手県は6位の「やまなかや」、7位の「焼肉ヤマト」といった福岡在住の私が知らない飲食店がランクインしています。

6位の「やまなかや(やまなか家)」は東北地方で展開しているサンドウィッチマンがCMしていることで有名な地元焼肉チェーン店ですが、こちらも自粛を受け4月28日から新しくテイクアウトを始めています。

7位の「焼肉ヤマト(焼肉冷麺ヤマト)」は本場盛岡冷麺と焼き肉の店で全商品が持ち帰り可能、また4月25日から岩手限定で丼ものなどの持ち帰り限定商品が新登場しており、検索ワードの増加につながったと考えられます。

 

図19:岩手県「テイクアウト」関連キーワード上位3飲食店検索推移(出典:ヤフーDS.INSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

表7:岩手県「テイクアウト」関連キーワード上位3飲食店検索推移(出典:ヤフーDS.INSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

表7からも、昨年はテイクアウトが認知されていませんでしたが、新型ウイルスの影響を受け感染者数の大きさに関わらず、テイクアウトが認知され始めたことが分かります。

「幸楽苑」は今年の5月21日から全商品のテイクアウトを全店舗で開始しています。
飲食店側も新型ウイルスの影響を受け販売方法を拡張し、テイクアウト商品の販売を増やし始めたことが分かります。

※写真はイメージです

※写真はイメージです

「テイクアウト」検索数推移からわかるコロナ後の変化
これらの結果から以下のことが言えます。

テイクアウトの検索数推移は緊急事態宣言の約2週間後をピークに減少
一方で緊急事態宣言解除後も昨年を超える検索数で推移し、テイクアウトの一定のニーズが伺える
今回は全国から3拠点を選び検索推移を比較しました。緊急事態宣言解除後に検索推移は減少傾向であるとはいえ、日本全国でテイクアウト需要が昨年と比べ急激に増加しています。

テイクアウトのピークは過ぎたものの今年(2020年5月18日の週)のテイクアウト検索数は前年同時期(2019年5月20日の週)と比較しても22.5倍程度の水準にあります。(表8参照)

さらに、6月に入っても検索数は10,000をきらず、昨年よりも約12倍の水準にあります。(表8参照)その為、テイクアウトの検索が継続していることが分かります。

 

表8:「テイクアウト」検索推移(表1に前年比例追加)/(出典:ヤフー:DS.INSIGHT データ取得日:2020年6月21日)

また、「ガスト」などはテイクアウトが出来るアプリがある為、一度検索するとアプリを認知し、認知後にアプリを利用する為、次回から検索する必要がなくなります。その為、一概に検索数の減少が需要減少とはいえないのではないかと私は考えます。

私はこれからの状況下では、自分たちの生活全てが過去の生活に戻ることはできないと考えています。しかし、この状況下だからこそ新しいことも生まれています。その一つがテイクアウトです。

テイクアウトが認知され私たちがテイクアウトを利用することにより、私たちの食を楽しむ選択肢が増えました。食を楽しむ選択肢が増えたことにより、これからは自分たちの生活や環境に応じて、食の手段を選ぶことが大切です。

今回は消費者の検索データを使用し分析を行いました。日常でも消費者の傾向などは現場で働いている方は、感覚として理解できているかと思います。
日頃の感覚を定量化でき、より的確に物事を把握できることがデータ分析の良さだと感じました。

今回は「テイクアウト」というキーワードをテーマにデータ分析をレポートしてみましたが、これからも、データ分析の面白さがわかるレポートをしていきたいと思います。

(横溝)

投稿者プロフィール

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NOBDATA編集部です。NOBDATA株式会社は福岡拠点のデータ分析企業です。これからの時代に必要な手法はKKD+D(データ)数値化された情報でビジネスを成功に導きます。NOBDATAからのお知らせ・セミナー情報などをお伝えします。