メンバーインタビュー

「データを見ていること自体が面白い」臨床現場からデータサイエンティストになった新川さんのキャリアストーリー

データサイエンティスト
株式会社DeeL 代表

新川 裕也

NOB DATAにおいて、大手企業のデータサイエンティストチームの立ち上げやその後の課題解決に貢献してきた、新川 裕也(しんかわ ゆうや)さん。データサイエンティストとして活躍する傍ら、大学の特任助教も務める彼のキャリアのスタートは、実は医療の臨床現場だったといいます。

臨床現場で活躍していた新川さんがどのようにデータサイエンティストへの道を歩むようになったのか、そしてデータサイエンティストとしての仕事にどのように取り組んでいるのか。お話を伺いました。

臨床工学技士、データサイエンティストになる

はじめに、新川さんのバックグラウンドについて教えてください。

香川県出身で、高校を卒業してからちょっとフリーター的な感じで過ごして。そのあと岡山に行って大学で臨床工学技士の資格を取ったあと、妻の地元の佐賀県の病院に就職して5年ほど過ごしました。内視鏡室でカメラのメンテナンスをしたり、透析とか人工呼吸の管理をしたり。特殊なやつで言うと、手術室……腹腔鏡とか胸腔鏡の手術で使うカメラを操作したりですね。

プライベートでは普段の仕事がインドアな反動からか、癒やしを求めて結構いろいろ……キャンプに行ったり、バイクに乗ったり、ちょっと釣りに行ったり。最近始めたのは少しウクレレを弾いたり。でも全部、そんなに深くはないです(笑)。

医療現場で活躍されていた新川さんが、データサイエンスに興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか?

医療現場ではパソコンをいじったりすることもほとんどなかったくらいなのですが、働きながら久留米大学大学院の修士課程に進み、バイオ統計学を学んだことが転機となりました。病院で「統計を勉強している」と話すと、脳外科や心臓外科の先生方から学会発表のためのデータ解析を頼まれるようになって、ちょいちょい手伝ったりして。

その後データサイエンス系の勉強会で発表をしていたら、たまたまその場にいたトライアルの子会社の社長に「うちに来ないか」と声をかけていただいて。それでガッツリ、データサイエンティストの道に進むことになりました。

興味深い流れですね。働きながら大学院でバイオ統計学を勉強しようと思ったのはどうしてですか?

将来的に教員としてのキャリアを広げるために、学位と専門性をしっかり積み上げたいと考えていたんです。

その中でバイオ統計学を選んだのは、医療の現場や研究で「統計が分かる人」が意思決定の質を大きく変えられると感じていたからです。ちょうど当時「統計学は最強の学問である」という書籍やデータサイエンスに関する話題も広がっていて、改めて体系的に学びたい気持ちが強くなりました。

加えて、自宅から通えて社会人の受け入れ体制が整っていたので、「これなら現実的に継続できそうだな」と思って。理想だけでなく、仕事と両立して学び切れる環境が整っていたので、一歩踏み出すことにしました。

データサイエンティストは「専門知識をヒアリングする力」が大事

新川さんにとって、データサイエンティストとはどのような仕事ですか?

主に2つの方向性があるかなと思っていて。

1つは、いろんなサービスを使っているとデータが溜まっていくと思うんですけど、その裏側のデータから、何かお金が儲かるような話だったり、みんなの暮らしがより良くなる情報を「探索的」に分析して探し出す仕事。

もう1つは、いろんな実験をしてみた時に、実際その介入した方法が良かったのか悪かったのか、それをデータに基づいて判断する因果推論のような仕事。

実際にはPythonやR、SQLといった言語を使って、データを分析できる形に「前処理」して、統計モデルや機械学習を使って解析してみる。それで意思決定をしたり、意思決定できる人にアドバイスをしたり、そんな仕事かなと思います。

データサイエンティストにとって何が重要だと思われますか?

業種・業界に関する専門知識があれば強いですが、現場でのヒアリングを通じて専門知識をしっかり聞き出すことが必要です。解析が間違ってしまったり、データの表面だけ見ちゃって「実はもっと関連している要因がありそう」といった部分を見落としたりするので。

「こういうデータもあるんじゃないですか?出せませんか?」という話をするためにも、専門知識をヒアリングする力はすごく大事だと思います。

新川さんが考える、データサイエンティストの仕事の”おもしろさ”はどこにありますか?

データを「前処理」するのって、みんな嫌って言いますけど(笑)、僕は割ときれいに処理できたら嬉しかったりするので、そこは楽しいポイントですね。工夫しないときれいな形にならなかったり、データがめちゃくちゃ大きい時にテーブルのくっつけ方を工夫してスピードを上げたり。

例えば医療データで、患者さん単位の血圧データなら簡単なんです。でも、今日の血圧、昨日の血圧……ってデータが縦に並んでいると整理しやすいんですけど、それがExcelとかでベタっと横に書いてあったりすると、「これを縦に変換しなきゃ」となりますよね。さらに手入力で半角全角がバラバラだったり……。

そういう時に、どんなアルゴリズムで回せばすぐきれいになるかなと考えて、きれいにコードが書けて、バシッときれいに処理できるとやっぱり嬉しいですね。ちょっとゲーム感覚に近いかもしれません。

あとは仮説通りの結果が見えてきた時も面白いですし、逆に全く想像していない結果が出てくる時も面白い。やっぱり、データを見ていること自体が面白いんじゃないかな、と思います。

お客様が「データで自信を持って意思決定できる状態」をつくりたい

これまでデータサイエンティストとして携わってこられたプロジェクトのなかで、印象深いものはありますか?

直近では佐賀大学の特任助教として臨床研究の解析にも携わっていて。一般の方で血糖値が気になる方を対象に、佐賀県神埼市の「桑菱茶」というお茶の効果を検証しました。

プラセボ茶と比較するクロスオーバー試験のデザインを組み、リブレというデバイスで血糖値を測定し解析した結果、桑菱茶を飲んでいる群では血糖上昇が明確に抑えられていて、かなり効果が出ていました。こういうリサーチクエスチョン(解析の種となる問い)に対してしっかり効果が出ると解析していて楽しいですね。

もう一つ印象に残っているのは食品メーカーのプロジェクトです。当初はデータがほぼない状態だったんです。注文を受けてもスプレッドシートに手書きで記録しているだけだったので、前処理がもう地獄で(笑)。

そこで「まずはアプリを作りましょう」と提案して、ローコードでポチポチ登録できるアプリを立ち上げました。データが溜まるようになったら、それをGoogle BigQueryにつなげて自動で同期させて、ダッシュボードを作って経営判断に使えるようにして。本当に0……いや0.1ぐらいの状態からDXしたな、という実感があって非常に印象に残っています。

データ分析のプロフェッショナルとして、NOB DATAで関わるお客様にどんな向き合い方をすることを心がけていますか?

まず意識しているのは、「分析=目的達成のための手段」という原点です。お客様が本当に解きたい問いは何か、現場での意思決定はどこで行われているか、成果が出たと判断されるのはどんな状態か。ここを最初に丁寧にすり合わせることを心がけています。

その上で、専門家として“言うべきことはきちんと言う”姿勢も大切にしています。データの限界、解釈の注意点、やるべき前提確認、逆に「この分析は今やっても価値が出にくい」という判断も含めて、誠実に伝える。短期的に耳当たりの良い報告より、長期的に信頼される伴走を優先したいと思っています。

また、最終成果物はレポートやモデルではなく「お客様側で意思決定が回り続ける状態」だと考えています。なので、再現できる形に落とすこと、そして担当者が腹落ちする言葉で説明することを常に意識しています。

NOB DATAで関わるプロジェクトを通じて、お客様にどんな変化をもたらしたいですか?

一言でいうと、「データで自信を持って意思決定できる状態」をつくりたいです。

多くの組織では、データはあるのに活用が一部の人に限られてしまったり、判断が経験や声の大きさに依存していたりしますが、そうではなくて、仮説→検証→改善のサイクルが適切に回る形に変えていきたい。

具体的には、「“なんとなく”ではなく、共通の指標と根拠で会話できるようになる」とか、「施策の良し悪しを再現性ある形で評価できるようになる」とか。そういうところから進んでいって、「データ抽出や集計が属人化せず、必要なときに必要な形で出せるようになる」「分析結果が”次に何をするか”まで落ち、実行につながるようになる」といったところまで変化していけるように、プロジェクトを通じて積み上げていきたいです。

最終的には、NOB DATAがいなくてもお客様自身で回せるところまで内製化が進み、必要なときに高度な支援を“戦略的に使える状態”になっていただくことが理想です。分析で終わらず、事業成果や現場の前進につながる変化を一緒に作っていくことをめざしています。

今後携わりたい仕事・プロジェクトはありますか?

リサーチクエスチョンが面白い仕事に取り組みたいなと考えています。例えばこれまで経験した中でいうと「税込表示と税抜表示のどちらがお客さんの反応が良いか」みたいな。その問い自体が興味深いと思える、面白い仕事をしていきたいなと思います。

データサイエンティスト / 株式会社DeeL 代表

新川 裕也しんかわ ゆうや

香川県出身福岡在住。修士課程で医療統計を専攻し、トライアルホールディングス、LINE Fukuokaを経てNOB DATA株式会社にjoin。その後佐賀大学医学系研究科で博士号(医学)を取得。各業種業態のクライアント様に、データ処理・BI作成、統計解析、因果推論、機械学習モデル構築、データサイエンス教育など幅広く提供。佐賀大学特任助教、第一薬科大学非常勤講師。PyData.Fukuoka立上げ/運営メンバー。 G's Academyメンター。MENSA会員。「データ分析失敗事例集」共著。