レポート

2024.04.23(火) 公開

ChatGPTを使って「専門的な内容についてのセカンドオピニオン」を得る

レポート NOB DATA株式会社

1. ChatGPTの知識量は

2023年3月14日にOpenAI社によって発表されたGPT-4は、さまざまな専門的・学術的な分野でGPT-3.5に比べて飛躍的な進歩を遂げました。実際、司法試験の模擬試験では、受験者の上位10%程度のスコアで合格するレベルと言われています。
※ただしこのスコアは発表当時の英語の場合であり、日本語ではそこまでのスコアは出ないと言われています。

2. セカンドオピニオンとしての活用の可能性

ビジネスの現場において、専門的な知識に基づいて大事な意思決定をする状況がしばしば生じます。それが、「Must」な内容であれば、当然「遵守する」という選択になりますが、「数ある選択肢の中でBetterな選択をしたい」という場合、専門的知識を持つ専門家に相談をしたうえで、自らで意思決定をすることになります。ただ、時に「専門家の意見や提案だけで決めてよいのだろうか」と感じ、セカンドオピニオンをもらいたい状況が発生することはないでしょうか?

ここで、ChatGPTがその役割を果たせるのではないでしょうか。その実験的な取り組みについて、「自社の新規事業について、商標登録を登録する必要が生じた」という状況を想定して、ChatGPTを活用したセカンドオピニオンを取得する実験を行いました。

3. はじめに:商標登録とは

3.1 商標登録 × 区分

商標登録とは、ある企業や個人が使用する商標(ブランド名、ロゴ、スローガンなど)を法的に保護するために行う手続きです。商標を登録することで、その商標の独占的な使用権が認められ、他者が無断で同一または類似の商標を使用することを防ぐことができます。これにより、商標の所有者は自身のブランドのアイデンティティを保護し、消費者が類似品による混同を避けるのを助けることができます。

そして、ここでもう一つ、商標登録において「区分」という考え方が重要になってきます。商標登録の「区分」とは、商標を使用する商品やサービスのカテゴリーを指します。

実はこの区分は、日本だけでなく、世界中の多くの国々で採用されている「ニース協定」という国際的な分類システムに基づき、商品とサービスはそれぞれ45の区分に分けられており、この分類システムによって、商標登録を申請する際には、その商標を使用する予定の具体的な商品やサービスを指定し、それに対応する区分を選択する必要が生じます。

例えば、区分25は「衣服、履物、帽子」といった商品に対応しており、区分35は「広告、ビジネスの管理、小売業に関するサービス」に対応しています。

商標を登録する際に適切な区分を選択することは重要です。というのは、登録された区分でのみ商標の保護が受けられるためです。もし将来異なる区分の商品やサービスでその商標を使用したい場合は、新たにその区分に対しても登録申請を行う必要があります。

例を挙げると、弊社は「NOB DATA」という社名ですが、弊社が「NOB DATA」という商標を、「技術的サービス」が該当する「区分42」で登録した場合、他の会社はこの「NOB DATA」という名称で、「区分42」に該当するサービスの商標を取ることはできません。ただ、例えばその会社が「NOB DATA」という商標で、ラーメン屋を開くことはできるでしょう。なぜならば飲食業は「区分43」だからです。

つまり、商標登録は「名称 × 区分」のセットで取る必要があるということになります。

3.2 商標登録はコストがかかる

ということは、もし自分の商標をどこでも使ってほしくないのであれば、45種類の区分すべてを押さえてしまえばよいことになります。しかし、この取得と維持にはコストがかかるので、普通は最低限の区分(=業種)だけ商標を取得するのが一般的です。

もし区分を多めにとってしまうと、他社に取られることはありませんが、不必要なコストがかさむことになります(資金が潤沢ならそれもアリかもしれませんが…)。逆に少なめにとってしまうと、万一自社が従事したい業種で、同じ商標を取られてしまうかもしれないのです!つまり、必要最低限の区分をしっかりと理解することがとても大事になってくるのです。

4. 実験内容

4.1 自分のビジネスをまず言語化する

まず、専門家に聞くにしても、そしてChatGPTに聞くにしても、自分のビジネスを言語化しなくてはなりません。そうしないと、誰に聞いたとしても適切な「区分」が分からないためです。

今回、試しに以下のビジネスモデルを考えてみました。ペットホテルのプロデュース支援(ペットホテルを開きたい法人や個人に、そのノウハウを伝授するコンサルティングサービス)

4.2 まずは専門家に聞いてみる

商標登録の出願の代行をできるのは弁護士と弁理士です。そこで今回弁理士に聞いてみたところ、以下が該当するとの見解でした。

・35 広告、ビジネスの管理、オフィス機能
・39 輸送、包装及び倉庫の保管、旅行の手配
・41 教育、トレーニング、エンターテイメント、スポーツ、文化活動に関するサービス
・43 飲食物の提供を伴う宿泊施設の提供に関するサービス

4.3 次にChatGPT-4に聞いてみる

次に、以下のようにChatGPTに聞いてみました。

「「ペットホテルのプロデュース支援事業」をやろうとしております。
その場合、どの区分で取ればいいと思いますか?」

すると以下のように回答してきました。

35: ペットホテルの「プロデュース支援」には、事業運営のアドバイス、マーケティング戦略の提供、事業管理のサポートなどが含まれる可能性があります。これらはクラス35に該当するサービスで、広告やビジネス管理、商業運営などのサービスをカバーしています。

42: もし、あなたのサービスに特定の技術的な側面や専門的な知識(例えば、ペットの安全や快適性に関する特別な設計やシステムの開発)が含まれる場合、このクラスも考慮に入れることができます。

43: 通常、ペットホテル自体のサービスはクラス43に分類されます。クラス43は宿泊施設の提供に関連するサービスを含んでおり、人間のホテルのサービスだけでなく、ペットホテルのような特殊な宿泊サービスもここに含まれます。

つまり、専門家(弁理士)とChatGPT-4だと、以下のように意見が分かれたことになります。

レポート NOB DATA株式会社 図1 専門家とChatGPTによる回答一覧

4.4 差分を詳しく聞いてみる

そこで、2者の意見が分かれた部分について、その理由を聞いてみることにします。具体的には、

・専門家は推奨したが、ChatGPTは不要とした - 区分39、41
・専門家は触れなかったが、ChatGPTが推奨してきた - 区分42

4.4-1 そもそも自分の理解を深める

ただその前に、そもそも私はこれらの区分について正しく理解しているでしょうか?そこで、各区分について、前提の理解を深めることにします。その際に有効なのがこの質問です。

「区分39を中学生でも分かるような表現に変えてもらえますか?」

もちろんこの「中学生」を「小学生」にするとさらに簡単になりますし、もっと具体的に「小学4年生」などと聞くこともできるので、ぜひお試しください。

さて、上記の質問について、ChatGPTはこのように教えてくれました。

もちろんです。クラス39について、中学生にも分かりやすく説明すると以下のようになります:
クラス39は、旅行や移動に関するサービスについてのカテゴリーです。このクラスに含まれるサービスは、主に次のようなものです:
輸送情報の提供:電車、バス、飛行機などの移動手段についての情報を教えるサービスです。
旅行に関する契約の代理・媒介又は取次ぎ:宿泊を除く旅行に関する手配を代わりに行うサービスです。例えば、旅行の予約やチケットの手配などです。
ペットを伴う企画旅行の実施:ペットと一緒に旅行するための特別なプランを提供するサービスです。
ペットを伴う旅行者の案内:ペットと一緒に旅行する人たちに、どこに行けばいいか、どうやって移動すればいいかなどのアドバイスをするサービスです。
観光地・観光施設に関する旅行情報の提供:観光地や観光施設についての情報を教えるサービスです。例えば、どんな場所が楽しいか、どんな特徴があるかなどです。
このクラスは、旅行や移動に関するさまざまなサービスをカバーしており、特にペットと一緒に旅行する際のサポートに関連するサービスが含まれます。

相当分かりやすくなりましたね。こうやってみると、かなり「旅行のアドバイス」によった区分のように見えます。そこで次にこう尋ねます。

「その前提で、あなたは、なぜ今回は区分39が不要だと思うのですか?」

すると以下の回答でした。

クラス39:このクラスは主に輸送、梱包および保管のサービス、旅行の手配に関連しています。もし、あなたのビジネスがペットの輸送サービスやペットのための特別な旅行手配サービスを提供する場合、このクラスが適切かもしれません。しかし、あなたの説明によれば、主に企画提案に焦点を当てているようですので、クラス39はあまり関連性がないかもしれません。

しかし、もしビジネスがペットを伴う旅行の手配や、ペットとその飼い主のための特別な旅行プランの提供などを含む場合、クラス39は非常に関連性が高いと言えます。この場合、ペットと一緒に旅行する人々に対する輸送手段の提供や旅行情報の提供などが含まれるためです。

とてもロジカルに回答してくれました。

今回の私の案で出したビジネスでは、旅行手配については考えていないので、そうなると、この区分は不要になると言えます。つまり、専門家が提示してきたものよりも、ChatGPTの意見の方が正しかったということになります。

4.5 同じことを繰り返して差分を比較する

上記で、専門家とChatGPTで意見の異なる項目のうち、区分39についてセカンドオピニオンを確認することができました。同じことを、差分が発生しているすべての区分で確認をしていきます。
つまり、

・分かりやすい言葉で、まず自分で区分の内容を理解する
・そのうえで、ChatGPTに、なぜその区分が不要だと思うか(または必要だと思うか)

という流れです。

5. まとめ

今回、あたかも「ChatGPTの方が正しい」というように見えたかもしれませんが、当然ですが、前提としてのこちらからのインプット情報が、専門家とChatGPTでまったく同じだったか、についてはいろいろな見方がありますし、ケースによってはそうならないこともあります。

ですので、ここで言及しているのは、あくまでも以下の2つの観点で、ChatGPTをセカンドオピニオンとして使うことができる、という点です。すなわち、

・自分の前提知識をしっかりと深めることができる
・専門家の見解を裏付ける、または反証するためのセカンドオピニオンを得ることができる

というものです。ぜひみなさんも活用されてください。