レポート

2025.01.29(水) 公開

データ分析を進化させる生成AI活用術
定性データの分析からGA4まで、すぐに実践できる効率化ガイド

レポート NOB DATA株式会社

1. はじめに

2022年にChatGPTが公開されてから2年余りで急速に普及した生成AIは、チャットによるやり取りや文章生成だけでなく、データ分析の現場でも存在感を増しています。

大規模言語モデル(LLM)は自然言語の理解度が高いため、SNS投稿のようなテキストによる定性データを対象とするだけでなく、数値データに関しても「結果の要約」「施策提案」「異常検知のヒント」といった多角的な示唆を提供してくれるようになりました。

本記事では、メリット・リスクの両面を踏まえつつ、生成AIを用いたデータ分析手法の全体像を解説します。定性データのグループ化や打ち手の提案が可能な点、GA4やBigQueryを活用した自動レポート化の事例、そしてハルシネーション対策やプロンプトエンジニアリングのポイントなどを網羅的にご紹介。生成AIを導入するうえで必要となる実務フローも整理しますので、日頃からデータ分析に携わる方やデータ活用を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。

2. 生成AIの強みを活かした活用イメージ

2.1 自然言語処理による定性データのグループ化

まず大きな強みとして挙げられるのが、生成AIが持つ高い自然言語処理能力です。単に単語の頻出を調べたり、文書をポジ・ネガ判定するだけでなく、コンテクストを深く理解しながら、文章全体の意味を推測できる点が魅力的です。

実務活用例1:サーチコンソールの検索キーワード

SEO対策において、欠かすことのできないGoogle Search Console。

検索キーワードは通常、どのワードがどれだけ検索流入をもたらしたかをチェックする程度に留まりがちですが、生成AIを使えば「このキーワードを検索するユーザーの検索意図は何か?」「自社のマーケティングファネルでどの段階に該当するか?」といった切り口で、より深い分析ができるようになります。結果として、例えばカスタマージャーニーのどこに空白があるかを発見し、新規コンテンツの作成や施策立案に繋げることができます。

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図1. テック情報を取り扱ったWEBサイトをサンプルに、検索意図ごとのレポートを生成した例

実務活用例2:ソーシャルリスニングやカスタマーサポートへの応用

X(旧Twitter)やクチコミサイト上のレビュー、カスタマーサポート履歴など、大量のテキストデータからは従来、単語単位の集計(ワードクラウド等)による大まかな可視化が中心でした。

しかし生成AIであれば、投稿者の具体的な悩みや期待値を抽出したり、感情分析と合わせてカテゴリー分けしたりと、より深いレベルでのインサイトを得やすくなります。

同一商品の複数の商談の議事録を分析させることで、どこに顧客の興味関心や懸念ポイントが集中しているかをChaGPTが分析した上で、それらを踏まえ最適化されたトークスクリプトを作成することも可能です。

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図2. Xのポストの感情別分析レポートを生成した例

2.2 データの解釈から打ち手まで提案可能

生成AIは「文章を理解する」だけにとどまらず、ユーザーが抱える問題やビジネス課題に対して、具体的な施策や方針を提案できる点もポイントです。

たとえば、検索意図の分析を踏まえて「ユーザーが比較検討フェーズにいる場合には、競合との機能比較を充実させるとよい」といったアドバイスが示されることも。具体的なコンテンツ案を作成することもできます。

もちろんAIの提案が常に最適解とは限りませんが、アイデアの起点として活用することで、担当者の発想を広げたり、検討時間を大幅に短縮したりできます。

3. 実務応用例:GA4データの日次・週次分析を自動化する

GA4(Google Analytics 4)のデータ分析においては、無料版でもBigQuery(以下BQ)へのエクスポートが可能になったため、大量のログデータを細かく分析するハードルは下がりました。

しかし、一方でネスト化された複雑なデータをビジネスサイドのメンバーがそのまま取り扱うのは容易ではありません。ここで、生成AIを活用した分析フローを構築すると、レポートの自動化と高度なインサイト抽出が同時に実現できます。

具体的な実務手順を見ていきましょう。

3.1 レポート形式の決定

最初に、「どの指標をどの頻度で確認したいか」「どのタイミングで意思決定に活かすか」を明確にしましょう。

例えば、下記のような使い分けができます。

  • 日次
    トラフィック総数や主要コンバージョン数の変動をリアルタイムに把握し、急なアクセス増減や障害発生を早期に検知・対処する

  • 週次
    新規・リピーターの比率やキャンペーン施策の効果を測定し、翌週の施策改善や予算配分の微調整につなげる。

  • 月次
    チャネル別の長期推移や主要KPIの達成度を総合的に振り返り、経営レベルのマーケティング戦略やリソース配分を見直す。

通常業務の中で特に負荷が高い分析作業を洗い出すことで、どのレポートを最初に自動化すべきかが見えてきます。

3.2 生成AIに読み込ませるデータを作成

GA4→BQにエクスポートしたデータは、ページビューやスクロールなどのイベントベースの構造になっており、通常一つのイベントに付随する多くの情報がネスト化されて格納されている膨大データとなっています。生成AIに無加工のまま大量のデータを与えると、誤った集計を行ってしまったり、回答がブレるリスクが高まります。

  • 前処理の重要性
    たとえば「デバイス種別別のセッション数」「ページURLごとの直帰率」「コンバージョンに至った経路」など、必要な情報だけを抽出し整形して、CSVやJSONにまとめる手順を挟むのがおすすめです。

  • データサンプリングの検討
    いきなりフルデータを生成AIにインプットするよりは、まずは一部データを活用し、プロンプトの回答傾向や分析結果の妥当性を確かめてみるとよいでしょう。

3.3 プロンプトの作成

生成AIを使うにあたっては、プロンプトと呼ばれる入力文次第で出力される回答が大きく変化します。

「結果は箇条書きで書いてほしい」「最後に推奨施策を3つ挙げてほしい」といった具合に、回答をどう出力してほしいかをプロンプトの中で明示しましょう。サンプルの入力・出力例を用意しておくと、生成AI側も回答スタイルを合わせやすくなります。

  • Few-Shot Promptの活用
    生成AI活用のデメリットの一つとして、必ずしも毎回出力形式が同一であるとは限らない点が挙げられます。そこで役に立つのが、Few-Shot Promptです。これは、ChatGPTに「お手本」を示してから質問することで、より望ましい回答を引き出す手法です。

例えば、ChatGPTに売上レポートを作成してもらう際に、下記のように例を示すことができます。

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具体例を示すことで、AIはパターンを理解し、同じような形式で回答してくれます。特に、決まったフォーマットでの出力が必要な場合や、特定のトーンや文体を維持したい場合に効果的です。

  • 「わからない場合は分析困難と返答させる」指示
    生成AIには、勝手に推測して誤った答えを出す(ハルシネーション)リスクがあります。これを避けるため、「判断材料が不十分なら無理に答えず、分析困難と返してください」という余地を残す設計が重要です。

3.4 定期実行

レポート NOB DATA株式会社 Slcakに定期レポート配信する場合の環境の一例

分析フローを確立したら、スクリプトやワークフローツールを用いて定期的にレポートを自動配信する仕組みを構築します。

週次・月次レポートが完成したらSlackで担当メンバーに共有する、もしくはメールで送るように設定しておくと、レポート送付の手間が減り効率的です。

せっかく作成した定期レポートが目に触れられず活用されないのはもったいないことです。どのツール・チャンネルであれば読まれやすいかを検討した上で送付先を決定するようにしましょう。

4. 注意点:生成AIのハルシネーションと数値データの扱い

4.1 ハルシネーション(幻覚)

生成AIは、巨大な学習データから推測して回答を生成する特性上、「存在しない情報をそれらしく説明する」という誤りを生じる可能性があります。

  • 対策としての検証
    AIから返ってきた分析結果を鵜呑みにせず、SQLクエリやPythonスクリプトなど、手動で集計・検証したデータと照合するステップを必ず入れましょう。特に、大量データの集計結果が数値として出てくる場合は、一見正しそうでも根拠が薄いことがあります。

4.2 数値の信頼性

生成AIはテキスト処理を得意とする一方、大規模な数値解析で計算ミスを犯したり、根拠のない数値を提示したりするケースがあります。

  • 前処理や段階的な分析がカギ
    直接ローデータをすべて読み込ませるより、BIツールやSQLで一度集計した結果をAIに解釈させるほうが精度が高まります。

5. まとめ

生成AIは、従来の手動分析やルールベースのテキストマイニングとは異なり、より柔軟かつ包括的にデータの特徴を捉えられる手段として急速に注目を集めています。

定性・定量を問わず、データが大量かつ複雑化する中で、AIの自動処理能力を上手く組み合わせれば、担当者の分析負荷を大幅に削減し、新たなインサイトを得る余地を広げることが可能です。

一方で、ハルシネーションをはじめとするリスクや、数値分析での誤回答といった懸念も存在します。これらを回避するためには、データの前処理やプロンプト設計、結果の検証というプロセスをしっかり踏む必要があります。GA4のレポート生成を例に見ても、まずは部分的なレポートを小規模データで試行し、AIの答えを人力で検証しながら使い方を学ぶのが得策です。

生成AIを活用することで、データ分析担当者は、新しい施策の発案や戦略立案などのよりクリエイティブな業務に時間とエネルギーを注げるようになるでしょう。ぜひ活用を検討してみてください。

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