レポート

2025.03.28(金) 公開

OpenAI Agents SDK:概要、用途

レポート NOB DATA株式会社

1. はじめに

人工知能(AI)の進化は目覚ましく、私たちの生活やビジネスのあり方を大きく変えようとしています。かつてのAIは、与えられた質問に答えるだけのシステムでしたが、現在では自律的に判断し、行動できるシステムへと進化しています。この変革の波において、AIは単に質問に答えるだけでなく、積極的に問題を解決する能力を持つようになり、その応用範囲は日々拡大しています。

この変革の最前線に立つのが、OpenAIが公開したオープンソースの開発キット「Agents SDK」です。このSDKは、開発者が意思決定を行い、自律的にタスクを実行できるAIアプリケーションを構築するための実用的なフレームワークを提供します。AIエージェントは、複雑なタスクを自律的に処理し、その過程で自己評価を行うことで、従来の手法よりも高品質で信頼性の高い成果を生み出すことが期待されています。

本レポートでは、この革新的な「Agents SDK」について、技術的な詳細には深入りせず、その概要、主要な機能、そして様々な分野での活用事例を中心に解説します。AIの未来を形作る可能性を秘めたこのSDKの全貌を、分かりやすくご紹介していきます。

2. OpenAI Agents SDKとは?

2.1 概要と主な特徴

OpenAI Agents SDKは、AIエージェントの開発を簡素化するために設計された、オープンソースのPythonライブラリです。このSDKは、以前のSwarmフレームワークを基盤とし、より洗練された、実用的なツールキットとして提供されています。Agents SDKは、開発者が大規模言語モデル(LLM)の能力を最大限に活用し、指示、ツール、エージェント間の連携、安全性確保の仕組み、実行状況の追跡といった要素を組み合わせることで、高度なAIアプリケーションを構築することを支援します。

このSDKの主な目的は、複雑なAIシステムの開発に必要な要素を、シンプルでありながら強力な方法で提供することです。開発者は、AIエージェントの複雑な動作メカニズムを管理することなく、高度なAIシステムを構築できるようになります。Agents SDKは、わずか数個の主要な概念(エージェント、ツール、ハンドオフ、ガードレール)に基づいて構築されており、洗練されたAIシステムの構築を目指す開発者にとって、その複雑な内部構造を意識せずに利用できるため、非常にアクセスしやすいツールと言えるでしょう。

2.2 AIエージェント開発の進化

従来のAIシステムは、主にユーザーからの問い合わせに応答することに重点が置かれていましたが、AI技術の進歩に伴い、自律的にタスクを実行し、意思決定を行うことができる「AIエージェント」という概念が登場しました。AIエージェントは、単に質問に答えるだけでなく、与えられた目標を達成するために必要な手順を計画し、実行する能力を持つシステムとして定義できます。

AIエージェントの特筆すべき点は、複雑なタスクを自律的に実行し、その過程を自己評価することで、より高品質で信頼性の高い成果を生み出すことが期待されている点です。この自己監視能力により、AIエージェントは自身の行動を継続的に評価し、必要に応じて修正を加えることができるため、より柔軟で適応性の高いシステム構築が可能になります。

OpenAI Agents SDKは、このようなAIエージェントの開発を加速させ、より洗練された自律型システムの構築を支援するための重要なツールとして位置づけられます。このSDKを利用することで、開発者はAIエージェントが持つべき様々な能力を効率的に実装し、現実世界の複雑な問題解決に役立つアプリケーションを開発することが期待されます。

2.3 従来のフレームワークからの進化

OpenAI Agents SDKは、以前のSwarmフレームワークを置き換えるものとして導入されました。Swarmからの進化として、より直感的で使いやすいAPI、統合されたトレーシングおよびガードレール機能などが挙げられます。Agents SDKは、Swarmで得られた知見を活かし、より実用的で生産性の高い開発環境を提供することを目指しています。

また、AIエージェント開発のための他のフレームワーク(例えばLangChainなど)と比較すると、Agents SDKは、エージェントの核となるループ処理とツールの利用に焦点を当て、抽象化を最小限に抑える設計思想を持っています。これにより、開発者はより直接的にAIエージェントの動作を制御し、カスタマイズすることが可能になります。LangChainが広範な機能を提供する「包括的な傘」のような存在であるのに対し、Agents SDKは、より特化した、洗練されたツールキットとして、AIエージェント開発の核心部分に注力していると言えるでしょう。

3. Agents SDKの主要コンポーネント

Agents SDKは、高度なAIエージェントアプリケーションを構築するための様々なコンポーネントを提供しています。これらのコンポーネントを組み合わせることで、開発者は複雑なタスクを自律的に実行できるインテリジェントなシステムを構築できます。

3.1 エージェント (Agents): 指示とツールを備えたLLM

Agents SDKの中核となる「エージェント」は、特定の指示(instructions)、利用可能なツール(tools)、他のエージェントへの連携機能(handoffs)、そして入力や出力の検証を行うためのガードレール(guardrails)などが設定された大規模言語モデル(LLM)です。エージェントは、あたかも知的な主体のように、与えられた指示に従い、必要に応じてツールを活用し、他のエージェントと連携しながらタスクを遂行します。

基本的な考え方として、エージェントは、システムプロンプトのような指示、呼び出しができるツール、他のエージェントへの委任機能、そしてオプションとして入力または出力に対するガードレールを備えています。エージェントは、まるで人間の従業員のように、明確な役割と責任を与えられ、それを実行するために必要な道具(ツール)と他の同僚(他のエージェント)との連携能力を与えられていると考えると分かりやすいでしょう。

エージェントを定義する主な要素には、名前(name)、実行方法を指示するinstructionsまたはinstructions_function、役割を説明するdescription、利用可能なツールのリスト(tools)、連携可能な他のエージェントのリスト(handoffs)、LLMのモデル設定(model_settings)、出力形式の指定(output_type)、そしてコンテキストの型指定(context_type)などがあります。これらの要素を組み合わせることで、開発者は特定のタスクに特化した、高度にカスタマイズされたAIエージェントを作成することができます。

エージェントがユーザーからの入力を受け取ると、「エージェントループ」と呼ばれる処理が実行されます。このループでは、エージェントはこれまでの会話履歴(ユーザー入力、以前のツールの結果、システムメッセージなど)を考慮し、最終的な回答を生成するか、ツールを呼び出すか(複数回連続して呼び出す可能性もあります)、または別のエージェントに処理を委任するかを決定します。最終的な回答が生成されるか、処理が委任されると、ループは終了します。このループ処理をSDKが自動的に管理してくれるため、開発者はエージェントの具体的なロジックとワークフローの設計に集中できます。

レポート NOB DATA株式会社 図1. エージェント構成の主な要素

3.2 ツール (Tools): 外部機能の活用

Agents SDKにおける「ツール」は、エージェントが外部のヘルパー機能(例えば、APIへのアクセス、計算の実行、ファイルへのアクセス、ウェブ検索、コンピュータの操作など)を呼び出すために使用する関数です。ツールは、エージェントの能力を拡張し、言語処理の範囲を超えたアクションを実行することを可能にします。これにより、AIエージェントは単に情報を提供するだけでなく、現実世界とインタラクトし、具体的なタスクを完了することができるようになります。

SDKには、ウェブ検索、ファイル検索、コンピュータの利用といった一般的なタスクを実行するための組み込みツールが用意されています。これらの組み込みツールを利用することで、開発者は最新の情報を取得したり、ローカルファイルの内容に基づいて回答したり、さらにはコンピュータを操作してタスクを自動化したりするAIエージェントを比較的容易に構築できます。

また、開発者は「関数呼び出し」の機能を利用して、自身で定義したPythonコードをツールとしてエージェントに統合することも可能です。これにより、特定のAPIとの連携や独自のビジネスロジックの実装など、エージェントの機能を柔軟に拡張することができます。例えば、天気予報APIと連携して特定の都市の天気を取得するツールや、データベースにアクセスして情報を検索するツールなどを独自に作成し、エージェントに利用させることができます。

カスタムの関数ツールは、Pythonのデコレータ(例: @function_tool)を使用して簡単に作成でき、これにより、特定のAPIとの連携や独自のビジネスロジックの実装など、エージェントの機能を柔軟に拡張することができます。ツールは同期処理と非同期処理の両方に対応しており、必要に応じてデータのログ記録も可能です。

3.3 ハンドオフ (Handoffs): エージェント間の連携

「ハンドオフ」は、あるエージェントから別のエージェントへ会話やタスクの実行権限を委任または切り替えるためのメカニズムです。これは、複雑なタスクを複数の専門的なエージェントが連携して処理する場合に非常に有効な機能です。

これは、例えば、言語に特化したエージェント(日本語のみ対応のエージェントと英語のみ対応のエージェントなど)や、特定の専門知識を持つエージェント(技術サポート担当と請求担当など)が存在する場合に非常に有効です。ユーザーの問い合わせ内容に応じて、適切な専門知識を持つエージェントに処理を委ねることで、より的確で効率的な対応が可能になります。

例として、ユーザーの問い合わせ内容を分析し、ショッピングに関する質問であればショッピングエージェントへ、返金に関する質問であれば返金エージェントへ自動的に転送するトリアージエージェントの構築などが考えられます。このように、ハンドオフ機能を利用することで、複雑なワークフローを複数のエージェントが連携して処理する、高度なマルチエージェントシステムを構築することができます。

ハンドオフの基本的な流れとしては、親となるエージェントが、特定のサブエージェントを参照する「ハンドオフツール」を呼び出すことで、SDKがそのサブエージェントに処理を切り替えます。ハンドオフの際には、必要に応じてコンテキストや会話履歴を新しいエージェントに引き継ぐことも可能です。

3.4 ガードレール (Guardrails): 安全性と品質の確保

「ガードレール」は、ユーザーからの入力やエージェントからの出力を検証し、ポリシーに違反する可能性のあるコンテンツを検出し、必要に応じてエージェントの実行を停止させるための安全メカニズムです。ガードレールは、AIエージェントが意図しない動作をしたり、不適切な情報を生成したりするのを防ぐために重要な役割を果たします。

入力ガードレールは、悪意のある可能性のあるコンテンツについてユーザー入力をスクリーニングし、出力ガードレールは、品質と適切性を保証するためにエージェント出力を検証します。例えば、ユーザーが不適切な質問をした場合に、それを検知してエージェントの応答を制御したり、エージェントが生成した回答が企業のポリシーに違反していないかを確認したりすることができます。

ガードレールが作動した場合、「トリップワイヤー」と呼ばれる信号が送られ、何らかの問題が発生したことが通知されます。これにより、開発者は問題発生を迅速に把握し、対応することができます。Agents SDKは、OpenAIの無料のModeration APIと統合されており、不安全なコンテンツを自動的にフィルタリングし、開発者が定義した指示階層に基づいてエージェントの動作を制御することができます。これにより、より安全で信頼性の高いAIエージェントアプリケーションの開発が可能になります。

3.5 トレーシング (Tracing): 実行フローの可視化

「トレーシング」システムは、エージェントの動作に関する詳細な可視性を提供します。これには、どのツールが使用されたか、どのような出力が生成されたかなどが含まれ、開発者はOpenAIダッシュボードを通じてこれらの情報を監視し、分析および最適化を行うことができます。トレーシング機能は、AIエージェントの実行プロセスを透明化し、問題発生時のデバッグやパフォーマンス分析を容易にすることに貢献します。

SDKは、各「エージェント実行」の詳細なトレースを自動的に記録し、デバッグ、分析、または記録保持のために利用できます。OpenAIプラットフォームのトレースダッシュボードでは、定義したワークフローに関する情報、呼び出されたエージェント、発生したハンドオフなどを確認できます。エージェントごとに、使用されたツール、クエリ、および応答も表示されます。この詳細なログ情報により、開発者はエージェントの動作をステップごとに確認し、予期しない動作やエラーの原因を特定することができます。

3.6 コンテキスト (Context): 状態とリソースの管理

「コンテキスト」は、複数のツール呼び出しやステップにわたってセッションデータ、認証情報、または一時的な状態を保持するために使用できる、変更可能なオブジェクトです。AIエージェントが複雑なタスクを遂行する際には、過去のやり取りやツールの実行結果などの情報を記憶しておくことが重要になります。コンテキスト機能は、このような情報を管理し、エージェントがより一貫性のある、状況に応じた応答を生成するのに役立ちます。

開発者は任意のPythonクラスをコンテキストとして作成したり、Agent(context_type=MyContext) のように型を指定したりすることで、コンテキストオブジェクトを定義し、実行時にエージェントに渡すことができます。ツールは、このコンテキストオブジェクトにアクセスしてデータの読み取りや更新を行うことができ、これにより、複数のステップにわたる推論や、ツール呼び出し内での高度なロジックの実行が可能になります。例えば、ユーザーIDやセッションの状態、以前のツールの実行結果などをコンテキストに保存し、後続の処理で利用することができます。

4. Agents SDKの利点

Agents SDKは、AIエージェントの開発において、開発者と企業双方にとって多くのメリットをもたらします。

4.1 開発者と企業にもたらすメリット

Agents SDKは、複雑で信頼性の高いAIエージェントの開発を大幅に簡素化します。これにより、開発者はより少ない労力で、高度なAIシステムを構築できるようになります。SDKは、エージェントの基本的なロジック、連携、およびインタラクションを効率化し、開発者がAIエージェントの構築をより簡単に開始できるようにします。

その結果、より洗練された自律型のAIシステムを構築することが可能になり、企業はこれらのシステムを様々な業務に活用することで、効率化や新たな価値創造が期待できます。Agents SDKは、AIエージェントを構築し、展開するための堅牢なツールキットを提供し、開発者にとって強力な味方となります。Pythonで構築されたこのSDKは、シンプルさと強力さのバランスが取れており、複雑な基礎メカニズムを管理することなく、高度なAIシステムを構築したい開発者にとってアクセスしやすいものとなっています。

4.2 迅速なプロトタイピングと開発

Agents SDKを利用することで、開発者は最小限のコードと構成で複雑なエージェントの動作を実現でき、アイデアから製品化までの時間を大幅に短縮できます。SDKは、オーケストレーションの詳細を抽象化することで、開発者が製品固有の機能に集中できるようにします。これにより、開発プロセスが加速し、市場への投入までの時間を短縮することが可能になります。例えば、Coinbaseのような大手暗号資産プラットフォームは、このSDKを使用してマルチエージェントサポートシステムのプロトタイプを迅速に作成し、展開しました。

4.3 開発コストの削減

エージェントシステムをゼロから構築するには、多大なエンジニアリング投資が必要となりますが、Agents SDKは、ループ管理、API呼び出しの同期、エラー処理、LLM用のツール出力のフォーマットなど、一般的なニーズに対応する既製のソリューションを提供することで、開発コストを削減します。オープンソースであるため、企業のニーズに合わせてカスタマイズすることも可能です。これは、リソースが限られたスタートアップ企業にとって特に大きなメリットとなり、堅牢なエージェント駆動型製品を少ない投資で開発できるようになります。

4.4 透明性とデバッグの容易さ

SDKに統合されたトレーシングダッシュボードは、すべてのエージェントのステップを記録およびレビューできるため、ビジネスアプリケーションにとって非常に革新的です。AIを「ブラックボックス」と見なすことを懸念する業界でも、トレース機能を利用することで、エージェントの動作を詳細に把握できます。顧客サポートエージェントが誤った回答をした場合でも、トレースを分析することで、どのツール呼び出しまたはステップで問題が発生したかを特定できます。

OpenAIプラットフォームのログ/トレース画面は、エージェントの監査可能性を高め、規制が厳しい業界や内部監査が必要な分野で特に重要となります。これにより、企業は必要に応じて結果を説明できるため、より安心してAIを統合できます。

4.5 最新モデルとツールへのアクセス

Agents SDKを使用することで、開発者はOpenAIの最高水準のモデル(例:GPT-4)や最新のツール(ウェブ検索、コード実行など)をすぐに利用できます。これにより、より弱いモデルに依存する代替手段と比較して、品質面で優位性を持つことができます。

高い精度や最新の情報が必要なアプリケーション(例:リサーチアシスタント、金融分析エージェント)にとって、OpenAIのモデルのパフォーマンスは大きなメリットとなります。OpenAIが今後さらに多くのツールを追加する可能性を示唆しており、SDKユーザーはこれらの新しいツールを容易に採用できます。

5. Agents SDKの活用事例

Agents SDKは、様々な分野で革新的なアプリケーションの開発を可能にします。以下に、その代表的な活用事例をいくつかご紹介します。

5.1 AIアシスタントの構築

ウェブ検索などのツールを利用して、役立つリサーチアシスタントを作成できます。例えば、特定のトピックに関する最新情報をウェブから収集し、要約してユーザーに提供するAIアシスタントなどが考えられます。また、天気APIと統合することで、ユーザーが指定した都市の天気情報を提供するアプリケーションを開発できます。

さらに、AIを活用した旅行予約エージェントを構築し、ユーザーの希望に合わせた旅行プランを提案したり、航空券やホテルの予約を行ったりすることも可能です。ショッピングアシスタントを作成し、ユーザーの質問に答えたり、おすすめの商品を提案したりすることで、ユーザーの購買体験を向上させることもできます。

5.2 複雑なタスクの自動化

Agents SDKを利用することで、これまで人間が行ってきた複雑なタスクをAIエージェントに自動化させることができます。例えば、顧客からの問い合わせ内容を理解し、適切な対応を行うAIを活用したカスタマーサポートシステムを構築し、チケットの処理や注文の詳細の取得など、顧客サポート業務を自動化できます。また、リアルタイムデータを取得して要約する自動化されたリサーチアシスタントを構築し、市場動向の分析や競合他社の調査などを効率化することも可能です。

さらに、カレンダーの管理やメールの送信などの生産性向上タスクを自動化することで、従業員の負担を軽減し、より創造的な業務に集中できる環境を整備することもできます。画面操作を認識し、実行可能なコマンドに変換することで、コンピュータの利用タスクを自動化することも可能です。複数のステップを必要とする推論プロセスを自動化し、より高度な意思決定支援を行うアプリケーションを開発することも可能です。

5.3 マルチエージェントシステムの開発

Agents SDKは、複数のエージェントが連携して複雑な目標を達成するマルチエージェントシステムの開発を容易にします。例えば、タスクをインテリジェントに専門のサブエージェントにルーティングするトリアージシステムを開発することで、効率的なワークフローを実現できます。

入力の言語を検出し、適切な言語対応エージェントに処理を委譲する言語ルーターを構築することも可能です。また、単一エージェントおよびマルチエージェントのワークフローを調整し、より複雑なタスクを効率的に処理できるシステムを構築できます。

5.4 顧客サポートの強化

Agents SDKを活用することで、顧客サポートの質を大幅に向上させることができます。例えば、FAQや過去の事例に簡単にアクセスできるエージェントを構築することで、顧客からの問い合わせに迅速かつ正確に対応できます。また、返金リクエストを送信できるエージェントを作成することで、顧客の手続きを簡略化し、満足度を高めることができます。ユーザー固有のデータにアクセスして、パーソナライズされたサポートを提供するエージェントを開発することも可能です。さらに、複数のエージェントが連携して顧客対応を行うマルチエージェントサポートシステムを構築することで、より複雑な問題にも対応できるようになります。

5.5 研究開発の効率化

Agents SDKは、研究開発の分野においても大きな可能性を秘めています。例えば、資産運用会社、プライベートエクイティ会社、クレジット会社、法律事務所などが、膨大な公開データや非公開データから迅速に実用的な洞察を抽出するのに役立ちます。

研究者は、社内の実験結果や研究データにアクセスしながら、公開されている論文や特許を探索できます。法律事務員が過去の事例を迅速に参照するのを支援したり、コーディングエージェントが技術ドキュメントをクエリするのを支援したりすることも可能です。

6. Agents SDKの対象ユーザー

OpenAI Agents SDKは、以下のようなユーザーにとって非常に価値のあるツールとなるでしょう。

6.1 AIアプリケーション開発者

大規模言語モデル(LLM)を活用したインテリジェントでインタラクティブなアプリケーションを構築しようとしている開発者。このSDKは、LLMを外部ツール、API、および構造化されたワークフローとシームレスに統合するための強力な機能を提供します。また、より効率的なタスク管理とエージェント間の連携を求めているAIシステム開発者にとっても、Agents SDKは最適なソリューションとなるでしょう。

6.2 LLMを活用したい開発者

OpenAIのモデルと組み込みツールを簡単にアプリケーションに統合したい開発者。Agents SDKは、LLMを活用して複雑なマルチステップタスクを実行したい開発者や、AIが外部システムと積極的に連携するエージェント駆動型アプリケーションを構築することに関心のある開発者にとって、非常に有用なツールです。

6.3 効率的なAIワークフローを求める企業

様々なタスクに対応できる有用で信頼性の高いエージェントを構築しようとしている企業。Agents SDKは、複雑なワークフローを自動化し、効率を向上させようとしている組織や、AIエージェントを既存のシステムやデータソースに統合することに関心のある企業にとって、競争力を高めるための重要な武器となるでしょう。

7. まとめ

OpenAI Agents SDKは、自律的にタスクを実行できるインテリジェントなAIエージェントを構築するための強力なオープンソース開発キットです。このSDKは、大規模言語モデル(LLM)に指示、ツール、ハンドオフ、ガードレール、トレーシング、コンテキスト管理などの主要なコンポーネントを組み合わせることで、AIエージェントの開発を簡素化し、効率化します。開発者や企業は、Agents SDKを活用することで、AIアシスタントの構築、複雑なタスクの自動化、マルチエージェントシステムの開発、顧客サポートの強化、研究開発の効率化など、多岐にわたるアプリケーションを実現できます。

Agents SDKの登場は、AIエージェント開発の新たな時代を切り開くものであり、今後、様々な分野で革新的なAIアプリケーションが生まれることが期待されます。

8. 参考文献

OpenAI Agents SDK Tutorial: Building AI Systems That Take Action | DataCamp

How to Use the OpenAI Agents SDK ? - Apidog

Building Agentic AI Applications using OpenAI Agents SDK - ADaSci

OpenAI Agents SDK

Agents SDK - OpenAI API

「ChatGPT導入・活用支援」はNOB DATAにご相談ください

ChatGPTの導入・活用に課題を感じていませんか?
NOB DATAでは、ChatGPT開発およびデータ分析・AI開発のプロフェッショナルが、多種多様な業界・課題解決に取り組んだ実績を踏まえ、ChatGPTの導入・活用を支援しています。社員向けのChatGPT研修も実施しており、お気軽にお問い合わせください。

ChatGPT導入・活用支援の詳細を見る