レポート
2025.06.24(火) 公開
OpenAI Codex:次世代ソフトウェアエンジニアリングエージェント徹底解説【2025年最新版】

1. はじめに
今日のソフトウェア開発は、より高速で効率的なツールを求めています。その中で、OpenAIが開発した「OpenAI Codex」は、自然言語からコードを生成する革新的なソフトウェアエンジニアリングエージェントとして注目を集めています。特に2025年5月16日に研究プレビューが公開され、ChatGPTユーザーへの提供が開始されたことで、その活用範囲は大きく広がっています。本記事では、OpenAI Codexの概要から具体的な使い方、多様な応用例までを、詳しく解説します。
2. OpenAI Codexとは?
2.1 概要と最新の利用状況
OpenAI Codexは、OpenAIが開発したクラウドベースのソフトウェアエンジニアリングエージェントです。自然言語の指示を解釈し、対応するプログラミングコードを生成する能力を持っています。最新のバージョンである「codex-1」は、OpenAIの基盤モデルであるo3をソフトウェアエンジニアリングに特化して最適化されたものです。
2025年5月16日に研究プレビューとして公開されたCodexは、現在、ChatGPT Pro、Enterprise、Teamユーザーが利用可能であり、PlusおよびEduユーザーも近日中に利用できるようになる予定です。これにより、より多くの開発者がAIを活用したコード生成の恩恵を受けられるようになります。かつては非推奨とされた時期もありましたが、最新の発表によりその利用可能性が再確認されています。
2.2 GitHub Copilotとの関係
OpenAI Codexは、MicrosoftとGitHubが提供するプログラミング自動補完ツール「GitHub Copilot」の主要なエンジンとして使用されています。Copilotは、OpenAI Codexの技術を基盤として、開発者のコーディング作業を強力に支援し、リアルタイムでのコード提案や補完を行います。このように、Codexの技術はすでに世界中の開発現場で活用されており、その有効性が実証されています。
2.3 主な機能
OpenAI Codexは、ソフトウェア開発の様々な局面で開発者をサポートする多岐にわたる機能を備えています。
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タスク実行:
機能の記述、コードベースに関する質問への回答、バグ修正、プルリクエストの提案など、多くのタスクを並行して実行できます。各タスクは、リポジトリがプリロードされた独自のクラウドサンドボックス環境で実行されます。 -
コードベースとの対話:
ChatGPTのサイドバーからCodexにアクセスし、プロンプトを入力して「Code」をクリックすることで新しいコーディングタスクを割り当てたり、コードベースについて質問したい場合は「Ask」をクリックしたりできます。Codexはファイルの読み書き、テストハーネス、リンター、型チェッカーなどのコマンドの実行が可能です。 -
進捗の監視と検証:
タスクの完了には通常1〜30分かかり、Codexの進捗状況はリアルタイムで監視できます。タスク完了後、Codexは環境内で変更をコミットし、ターミナルログやテスト出力の引用を通じて、そのアクションの検証可能な証拠を提供します。これにより、タスク完了中に実行された各ステップを追跡できます。 -
レビューと統合:
ユーザーは結果を確認し、さらなる修正を要求したり、GitHubプルリクエストを開いたり、変更をローカル環境に直接統合できます。製品内で、Codex環境を実際の開発環境にできるだけ近づけるように設定できます。 -
AGENTS.mdファイルによるガイド:
リポジトリ内に配置されたAGENTS.mdファイルによってCodexをガイドできます。これらのテキストファイルはREADME.mdに似ており、Codexにコードベースのナビゲート方法、テストに実行するコマンド、プロジェクトの標準プラクティスへの準拠方法を伝えることができます。
2.4 技術的背景
Codexは、ソフトウェアエンジニアリング向けに最適化されたOpenAI o3のバージョンであるcodex-1を搭載しています。codex-1は、実際のコーディングタスクで強化学習を用いてトレーニングされており、人間のスタイルやPRの好みと密接に一致し、指示に正確に従い、合格する結果が得られるまで繰り返しテストを実行できるコードを生成します。
コーディング評価と内部ベンチマークでは、codex-1はAGENTS.mdファイルやカスタムスキャフォールディングがなくても強力なパフォーマンスを示しています。SWE-Bench Verifiedの精度は、1回の試行で67%、8回の試行で75%に達し、OpenAI内部SWEタスクでは、o1-high、o4-mini-high、o3-highと比較して、codex-1が75%の精度を示しています。
Codexは研究プレビューとしてリリースされており、セキュリティと透明性が優先されています。ユーザーは引用、ターミナルログ、テスト結果を通じてCodexの作業を検証できます。
3. OpenAI Codexの具体的な使い方
OpenAI Codexを効果的に活用するためには、そのワークフローとプロンプトの記述方法を理解することが重要です。
3.1 タスクの送信と実行フロー
Codexは、chatgpt.com/codexにアクセスしてタスクを送信することで利用できます。基本的な実行フローは以下の通りです。
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タスク送信:
chatgpt.com/codexにアクセスして、Codexに実行してほしいタスクを自然言語で記述します。 -
Dockerコンテナの起動とリポジトリのクローン:
base imageに基づいて新しいDockerコンテナが起動し、指定されたbranchまたはshaにリポジトリがクローンされます。 -
ネットワークアクセスの無効化:
エージェントはこれ以降、依存関係をインストールできません。 -
ターミナルコマンドの実行:
エージェントはターミナルコマンドをループで実行し、コードを記述し、テストを実行し、動作確認を試みます。AGENTS.mdファイルで定義されたlintコマンドまたはテストコマンドを遵守しようとします。 -
差分の表示:
エージェントがタスクを完了すると、その変更内容が差分(diff)として表示されます。ユーザーはプルリクエスト(PR)を開くか、フォローアップコメントで返信して追加の変更を依頼するかを選択できます。
3.2 Custom Functionの作成手順
FlutterFlowなどのローコード開発プラットフォームでCustom Functionを作成する際にも、Codexは強力な支援となります。
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関数名を定義:
作成する関数の概要を表す適切な名前(英語推奨)を「Function Name」に入力します。 -
戻り値を定義:
関数の戻り値の型(例: String, List, JSONなど)と、Nullableであるか否かを設定します。 -
引数を定義:
関数が必要とする引数名とその型を定義します。引数名もコード生成に影響するため、明確な名前を付けましょう。 -
コードの概要入力と生成:
コードの概要説明を英語で簡潔に(100文字以内推奨)入力し、生成ボタンをクリックします。 -
生成コードの確認:
OpenAI Codexによって生成されたコードを確認します。必要に応じてChatGPTなどの外部ツールでコードの解説を求めることも有効です。 -
生成コードの適用と保存:
「Copy Function」ボタンをクリックして生成コードをエディタに適用し、必要に応じて修正を加えます。「Check Errors」で文法チェックを行い、問題がなければ「Save」で保存します。
3.3 Codeモードの活用例
Codeモードは、Codexでコードを積極的に変更し、プルリクエストを準備する場合に使用します。
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セキュリティ脆弱性:
複雑なロジックを監査し、セキュリティ上の欠陥を発見・修正します。-
例: <my package> にメモリ安全性の脆弱性があります。発見して修正してください。
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コードレビュー:
プルリクエストのURLに.diffを追加し、プロンプトに含めることで、コードの改善点を提案させることができます。-
例: 私のコードをレビューして改善点を提案してください。diffは以下の通りです。<diff>
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テストの追加:
既存の変更を実装した後、ターゲットを絞ったテスト生成を実施します。-
例: 私のブランチから、以下のファイルのテストを追加してください。<files>
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バグ修正:
スタックトレースのみで問題を特定し、修正する能力に優れています。-
例: <my package> 内のバグを見つけて修正します。
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製品とUIの修正:
Codexはブラウザをレンダリングすることはできませんが、軽微なUIの不具合を修正できます。-
例: オンボーディングページのモーダルが中央に配置されていません。修正してください。
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3.4 高度な設定
Codexはすぐに使用できますが、カスタム環境を指定してエージェントにプロジェクトのニーズに合わせて動作させることも可能です。
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環境の作成:
デフォルトでは、エージェントはユニバーサルイメージを実行するDockerコンテナ内で実行されます。主要な言語(Python、Go、Rust、Java、Ruby)がプリインストールされていますが、ベースとなるDockerfileを参照してカスタム環境を設定できます。 -
セットアップコマンドの追加:
リポジトリが /workspace ディレクトリにクローンされた後、指定されたすべてのセットアップコマンドが実行されます。依存関係のインストール、コンパイル、lint、ユニットテストの実行に必要なものをすべてインストールするように設定できます。 -
AGENTS.mdの作成:
AGENTS.mdを追加して、共通のコンテキストを提供します。これは、エージェントがリポジトリ内での動作を理解するために読み込む標準的なMarkdownファイルです。作業対象となるファイルやフォルダの概要、貢献内容とスタイルガイドライン、移行対象となるコードベースの構成要素、変更の検証方法(lintの実行、テストなど)を含めることで、Codexのパフォーマンスを最大化できます。
3.5 効果的な利用方法(プロンプトのヒント)
ChatGPTと同様に、Codexの効果はユーザーが与える指示によって決まります。
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grep可能な名前を使用する:
特定のファイル名、シンボル、または一意のパッケージ名を使用すると、適切な場所を素早く見つけることができます。 -
作業場所を指定する:
単一のファイル、または最大で100個程度のファイルを含むパッケージを指定すると、最適なパフォーマンスを発揮します。 -
完全なスタックトレースを貼り付ける:
ファイルパスと行番号を含む正確なスタックトレースは、バグを即座に特定するのに役立ちます。 -
複数のタスクを連続して実行する:
各タスクは独立した環境で実行されるため、複数のタスクを同時にキューに入れても問題ありません。 -
作業結果に合格/不合格を判定する:
ターミナルにアクセスできるため、ユニットテストやlintで検証可能なものはより確実に実装されます。 -
大きな変更を分割する:
作業を小さく、焦点を絞ったタスクに分割することで、エージェントが個別にテストしやすくなり、レビューも容易になります。 -
行き詰まったら、Codexに任せる:
ブランチを作成して問題をCodexに引き継ぐことで、複数の解決策を並行して検討できます。 -
一日を始める前に、いくつかのタスクを開始する:
通勤時間や朝のコーヒーを飲む前にタスクを開始し、戻ってきたときに最新の差分を確認してレビューに備えることができます。
4. OpenAI Codexの応用例
OpenAI Codexは、その自然言語からコードを生成する能力を活かし、多岐にわたる分野で応用されています。
4.1 ウェブサイトコーディングにおける活用
ウェブサイトのコーディングは、Codexの最も直接的な応用例の一つです。自然言語の指示でHTML、CSS、JavaScriptなどのコードを生成できます。
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ウェブサイトヘッダーの作成:
「add a header with a logo」(ロゴ付きのヘッダーを追加)というコマンドを入力するだけで、ヘッダー要素とロゴを含むコードが生成されます。 -
セクションの追加:
「add a light salmon section that has some margin around it」(マージン付きのライトサーモン色のセクションを追加)といった指示で、希望するスタイルのセクションが作成されます。 -
要素の追加:
画像、テキスト、ボタンなど、ページに必要な様々な要素を自然言語の指示で簡単に追加できます。 -
サイトのコーディングとエクスポート:
生成されたコードをウェブ開発ツールに貼り付け、プレビューしながら編集し、完成したウェブサイトとしてエクスポートすることが可能です。
4.2 その他の多様な応用
ウェブサイトコーディング以外にも、Codexは様々なプログラミングタスクに応用可能です。
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データサイエンスチャートの生成:
matplotlibなどのライブラリを使用して、データサイエンスチャートを生成できます。OpenAIが公開したデモンストレーションでは、印象的な共参照解決能力が示されました。 -
サービスやアプリとの連携:
Mailchimp、Microsoft Word、Spotify、Google Calendarなどの既存のサービスやアプリと連携するコードを生成できます。 -
コードのデバッグとリファクタリング:
バグの特定と修正、既存コードの改善提案を行います。 -
テストコードの生成:
新機能やバグ修正に対するテストコードを自動生成し、品質保証をサポートします。 -
プログラミング教育:
プログラミング初心者向けの学習ツールとして、自然言語で書かれた課題に対するコード例を提示するのに役立ちます。
5. まとめ
OpenAI Codexは、自然言語とコードのギャップを埋める画期的なソフトウェアエンジニアリングエージェントです。特に2025年5月の最新発表により、ChatGPTユーザーへの提供が開始され、そのアクセス性と活用可能性はさらに広がりました。概要、使い方、応用例を通じて、Codexが開発者の生産性を飛躍的に向上させ、より創造的な作業に集中できる環境を提供することがお分かりいただけたでしょう。ソフトウェア開発の未来において、OpenAI Codexは不可欠なツールとなることでしょう。
6. 参考文献
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