レポート

2025.06.25(水) 公開

OpenAIの新機能「Connectors」と「Record Mode」徹底解説:ビジネスを加速するAI活用術

レポート NOB DATA株式会社

1. はじめに

OpenAIは、ChatGPTのビジネス向けプランに「Connectors」と「Record Mode」という画期的な新機能を導入しました。これらの機能は、ChatGPTを単なる会話ツールから、企業の内部知識と連携し、会議の内容を要約し、企業データを分析できる強力なビジネスアシスタントへと進化させます。本記事では、これらの新機能の概要、具体的な使い方、ビジネスにおける応用例、そして導入を検討する上で考慮すべき点について、SEO対策の観点も踏まえて詳しく解説します。ーグループに特化した最適化戦略が進んでいることを示唆しています。単一の汎用AIから、特定の専門分野に特化した「エキスパートAI」へと移行する傾向が明確に見て取れます。

2. OpenAI Connectorsとは?

2.1 Connectorsの概要と目的

OpenAI Connectorsは、ChatGPTが企業の内部システムやクラウドベースのデータソースと連携し、リアルタイムで情報を取得・活用できるようにする機能です。これにより、ChatGPTは公開情報だけでなく、社内の機密データや業務データに基づいた、よりパーソナライズされた、文脈に即した回答を提供できるようになります。

Connectorsの主な目的は、ChatGPTを企業の「知識基盤」と深く統合し、従業員が社内データを活用して迅速な意思決定や深い分析を行えるようにすることです。これにより、手作業で複数のシステムを横断して情報を収集する手間が大幅に削減され、生産性が向上します。

このConnectorsの導入は、OpenAIがChatGPTを単なる汎用AIから、特定のビジネスニーズに特化した「エンタープライズAIソリューション」へと戦略的にシフトさせていることを示しています。この動きは、Microsoft CopilotやGoogle Geminiといった競合他社が提供するエコシステム内での深い統合に対抗するものです。OpenAIは、自社が広範なエンタープライズソフトウェアスイートを持たない中で、企業ユーザーを獲得するための戦略として、ChatGPTを「プラットフォームに依存しないAIユーティリティ」として位置づけています。

この戦略は、ChatGPTがGmail、Outlook、Google Drive、SharePoint、Dropbox、Box、GitHub、HubSpot、Linear、Teamsなど、多岐にわたるサードパーティプラットフォームと連携できる機能を提供することで実現されます。これにより、企業は既存のインフラストラクチャを変更することなくChatGPTの機能を活用できるため、MicrosoftやGoogleが持つ「フルスタック統合」の優位性に直接対抗し、多様な技術環境における市場浸透を最大化する狙いがあります。

2.2 対応アプリケーションと連携の仕組み

Connectorsは、Gmail、Outlook、Google Drive、Microsoft Teams、SharePoint、Dropbox、Box、GitHub、HubSpot、Linearなど、多岐にわたる主要なビジネスアプリケーションとの連携をサポートしています。これらの連携により、ChatGPTはユーザーのプロンプトに基づいて関連情報を検索し、応答に活用することができます。

  • 連携の仕組み:

    • 情報交換:
      Connectorを有効にすると、ChatGPTは接続されたアプリケーションから情報を送受信し、プロンプトに関連する情報を見つけて応答に利用します。例えば、GitHub Connectorが有効な場合、「バックエンドでファイルアップロードを処理した箇所を見せて」と尋ねると、ChatGPTはGitHubに「ファイルアップロードハンドラー バックエンド」のようなクエリを送信し、最も関連性の高い情報を見つけ出します。

    • 既存のアクセス権限の尊重:
      Connectorsは、組織内の既存のユーザー権限を完全に尊重します。つまり、ユーザーがアクセス権限を持つコンテンツのみがChatGPTによって検索・表示されます。この「既存のアクセス権限の尊重」という原則は、企業のデータガバナンスとセキュリティポリシーの維持に不可欠です。これは、AIによる情報漏洩のリスクを軽減し、企業が安心してChatGPTを導入するための重要な信頼要素となります。結果として、これは広範なエンタープライズ導入を促進します。しかし、この厳格な権限管理は、同時に、ユーザーがアクセス権限を持たない情報はChatGPTも参照できないという制約を生じさせます。これは、AIの「知識」が個々のユーザーの権限範囲に限定されることを意味し、組織全体の統一された知識ベース構築において、権限管理の重要性を再認識させるものです。つまり、AIが真に「組織の知識」を活用するためには、企業は基盤となる権限構造が堅牢であり、望ましい情報フローを反映していることを確認する必要があります。

    • Deep Researchとの連携:
      Connectorsは、ChatGPTの既存の「Deep Research」機能と連携することで、複数のソースを横断した高度な分析やレポート作成を可能にします。これにより、競合分析、インシデントの事後検証、コードレビューなど、複雑なタスクに対応できます。

    • 同期型Connectors:
      Google Driveなどの同期型Connectorsは、選択されたコンテンツを事前にインデックス化し、ワークスペース内で最新の知識ベースを構築します。これにより、明示的なソース選択なしに関連データが自動的に参照され、応答速度と品質が向上します。

  • 対応ファイル形式:
    Connectorsは、TXT、PDF、CSV、XLSX、PPTX、DOCXなど、ほとんどの一般的なファイルタイプからテキストデータを取得できます。ただし、現時点ではマルチモーダルサポート(画像や視覚的なPDFの分析)は利用できません。

表: Connectors対応アプリケーション一覧

アプリケーション名
チャット検索 (Chat Search)
ディープリサーチ (Deep Research)
利用可能プラン (地域制限)
Box
✔︎
✔︎
Team, Enterprise, Edu (グローバル) / Plus, Pro (EEA, スイス, UKを除く)
Custom Connectors (MCP)
-
✔︎
Pro, Team, Enterprise, Edu (グローバル)
Dropbox
✔︎
✔︎
Team, Enterprise, Edu (グローバル) / Plus, Pro (EEA, スイス, UKを除く)
GitHub
-
✔︎
Team, Enterprise, Edu (グローバル) / Plus, Pro (EEA, スイス, UKを除く)
Gmail
-
✔︎
Team, Enterprise, Edu (グローバル) / Plus, Pro (EEA, スイス, UKを除く)
Google Calendar
-
✔︎
Team, Enterprise, Edu (グローバル) / Plus, Pro (EEA, スイス, UKを除く)
Google Drive
-
✔︎
Team, Enterprise, Edu (グローバル) / Plus, Pro (EEA, スイス, UKを除く)
Google Drive 同期型コネクタ
✔︎
-
Team, Enterprise, Edu (グローバル)
HubSpot
-
✔︎
Team, Enterprise, Edu (グローバル) / Plus, Pro (EEA, スイス, UKを除く)
Linear
-
✔︎
Team, Enterprise, Edu (グローバル) / Plus, Pro (EEA, スイス, UKを除く)
Microsoft OneDrive
✔︎
✔︎
Team, Enterprise, Edu (グローバル) / Plus, Pro (EEA, スイス, UKを除く)
Microsoft Outlook Calendar
-
✔︎
Team, Enterprise, Edu (グローバル) / Plus, Pro (EEA, スイス, UKを除く)
Microsoft Outlook Email
-
✔︎
Team, Enterprise, Edu (グローバル) / Plus, Pro (EEA, スイス, UKを除く)
Microsoft SharePoint
✔︎
✔︎
Team, Enterprise, Edu (グローバル) / Plus, Pro (EEA, スイス, UKを除く)
Microsoft Teams
-
✔︎
Team, Enterprise, Edu (グローバル) / Plus, Pro (EEA, スイス, UKを除く)

2.3 カスタムConnectors(Model Context Protocol: MCP)

OpenAIは、カスタムConnectorsのサポートを通じて、Model Context Protocol (MCP) を導入しました。MCPは、大規模言語モデル(LLM)が外部ツール、データベース、APIと標準化されたインターフェースを通じて動的に対話できるようにするオープンプロトコルです。

  • MCPの目的:
    MCPの主な目的は、AIモデルと外部ツールの間の統合を容易かつ標準化することです。これにより、LLMは企業のファイル、システム、独自のデータを含む外部コンテキストに安全にアクセスできるようになります。企業は、MCPを使用して独自のコネクタを構築し、ChatGPTを自社のプロプライエタリなシステムや内部知識ベースに接続することができます。

  • アーキテクチャと機能:
    MCPはクライアント-サーバーアーキテクチャに従い、MCPクライアント(例:Claude Desktop)が情報を要求しタスクを実行し、MCPサーバーが外部ツールやデータソースへのアクセスを提供します。MCPは、リソース(データ公開)、ツール(機能)、プロンプト(インタラクティブなテンプレート)という3つのコアプリミティブを定義しています。

  • 標準化の重要性:
    MCPは、元々Anthropicによって開発され、2024年初頭にオープンソース化されましたが、OpenAIもそのステアリングコミッティに参加し、この標準の採用を支持しています。このオープン標準の採用は、AIエコシステム全体に大きな影響を与えます。それは、企業が特定のベンダーに縛られる「ベンダーロックイン」のリスクを軽減し、異なるAIモデルやツール間での相互運用性を促進するためです。これにより、企業はより柔軟にAIソリューションを選択・導入できるようになり、AI市場全体の健全な発展に寄与することが期待されます。

2.4 Connectorsの利用方法

Connectorsの利用は、ChatGPTのインターフェース内で直感的に行えます。

  • 新しいアプリケーションの接続方法:

    • ChatGPTの右上にあるプロフィールアイコンを選択し、「設定」をクリックします。

    • 設定メニューから「Connectors」をクリックします。

      レポート NOB DATA株式会社 図1. Connectors設定画面
    • 接続したいアプリケーションの横にある「接続」をクリックします。

    • 各アプリケーションのログインフローにリダイレクトされるため、サインインして権限を付与し、ChatGPTがアクセスできるコンテンツを確認します。

    • 各アプリケーションのログインフローにリダイレクトされるため、サインインして権限を付与し、ChatGPTがアクセスできるコンテンツを確認します。

    • 管理者による制御:Enterprise、Edu、Teamワークスペースでは、ワークスペースのオーナーと管理者がConnectorsの利用可否を管理できます。

  • Connectorsの利用方法:

    • ChatGPTで新しいチャットを開始します。

    • 「ツール」をクリックします。

    • 「Connectorsを検索」または「ディープリサーチを実行」を選択します。

    • 1つまたは複数のソースを選択します。

    • 質問を入力します。

    • ChatGPTの応答を確認する際、引用元をクリックすると、接続されたネイティブアプリで元のファイルが開きます。

    • 同期型Connectorsの活用:同期型Connectorsは、関連するインデックス化されたデータを明示的なソース選択なしに自動的に参照します。これにより、ユーザーはより自然な形で質問を投げかけることができます。

3. OpenAI Record Modeとは?

3.1 Record Modeの概要と目的

OpenAI Record Modeは、会議、ブレインストーミングセッション、または音声メモなどの音声コンテンツを文字起こしし、要約する機能です。この機能の目的は、話された内容を整理された知識に変換し、必要に応じて関連する文脈を会話に持ち込むことができるようにすることです。

Record Modeは、会議中にマルチタスクを行う必要をなくし、重要なポイントを見逃す心配を軽減します。生成される要約には、主要なポイントとアクションアイテムが含まれ、これらは転記の特定の部分にリンクされており、後で簡単に確認できます。

このRecord Modeは、OpenAIが「応答するAI」から「記憶するAI」へとシフトしていることを象徴するものです。これまで、AIは文書へのアクセスは可能でしたが、意思決定の背景や会話のニュアンスを追跡することはできませんでした。Record Modeの登場により、一時的な音声データが永続的で検索可能な知識へと変換され、より洗練されたAIエージェントが時間の経過とともに文脈やニュアンスを理解するための基盤が構築されます。これは、AIが単なるツールではなく、チームメンバーのように振る舞い、過去の対話から学び、関連する情報を提供できるようになる未来への重要な一歩です。

3.2 Record Modeの利用方法

ChatGPT Record Modeの使い方は以下の通りです。

  • 録音の開始:
    任意のチャットの下部にある「録音」ボタンをクリックします。初回利用時には、マイクやシステムオーディオのアクセス許可を付与する必要がある場合があります。他者を録音する場合は、必ず事前に適切な同意を得る必要があります。

  • 自然に話す:
    ChatGPTは話された内容をリアルタイムで文字起こしし、経過時間が表示されます。自由に一時停止・再開が可能です。

  • 終了とメモの生成:
    終了したら「送信」をクリックします。ChatGPTが録音をアップロードし、構造化された要約、主要なポイント、アクションアイテムを含むプライベートなキャンバスを開きます。

  • 編集または変換:
    キャンバスは手動で調整できるほか、ChatGPTにメール、プロジェクト計画、またはコードの骨格として書き換えるよう指示することも可能です。

  • 後で検索:
    転記された内容は、グローバル検索を通じてチャット履歴とともに検索可能です。検索結果をクリックすると、録音内の正確なタイムスタンプに移動できます。

3.3 対応デバイスと利用プラン

Record Modeは、ローンチ時点ではChatGPT TeamsのmacOSデスクトップアプリでのみ利用可能です。OpenAIは、今後Plus、Pro、Enterprise、Eduユーザーにも提供を拡大する予定です。

このmacOSおよびTeamプランを優先した展開は、OpenAIの戦略的なアプローチを示唆しています。これは、安定したプラットフォーム上の特定の高価値ユーザーセグメント(ビジネスチーム)からフィードバックを収集し、機能を洗練させることを目的としています。各セッションの録音時間は最大120分に制限されており、これを超えると自動的に停止し、メモが生成されます。

4. Connectors & Record Modeのビジネス応用例

OpenAIのConnectorsとRecord Modeは、ビジネスにおける様々なシナリオでその真価を発揮し、業務の効率化、意思決定の加速、チームコラボレーションの強化に貢献します。

4.1 業務効率化と生産性向上

Connectorsは、複数の社内システムやクラウドサービスに散在する情報を一元的に検索・分析することで、情報収集にかかる時間を劇的に短縮します。例えば、ハブスポット、Teams、社内メッセージングシステムを横断して四半期計画に必要なインサイトを収集するような複雑なクエリが、手作業では何時間もかかるところを、Connectorsを使えばわずか数分で完了できます。

Record Modeは、会議中のメモ取りやマルチタスクの必要性を排除し、参加者が議論に集中できるようにします。会議終了後には、自動的に生成される要約、主要なポイント、アクションアイテムを活用し、議事録作成やフォローアップ作業を大幅に効率化できます。さらに、転記された内容を元に、メールの下書き、プロジェクト計画、さらにはコードの骨格を生成することも可能です。これにより、定型的な文書作成にかかる労力が削減され、より戦略的な業務に時間を充てることができます。

4.2 データ分析と意思決定の加速

ConnectorsとDeep Research機能の組み合わせは、社内外の膨大なデータソースを横断した深い分析を可能にし、よりデータに基づいた意思決定を加速させます。例えば、過去のスプリントでリリースされたすべての項目を、PR記述、設計ドキュメント、仕様ファイルから要約したり、アナリストレポートに記載されている業界ベンチマークと自社の機能採用数を比較したり、昨日の事後検証で参照された障害の根本原因を特定し、フォローアップアクションをリストアップしたりすることが可能になります。

また、Connectorsは企業データにアクセスすることで、自動的に分析モードに入り、時系列プロットなどの視覚化を生成することもできます。これにより、複雑なデータセットから迅速に傾向を把握し、ビジネスインテリジェンスのプロセスを強化することが可能になります。

4.3 チームコラボレーションの強化

Record Modeによって録音された会議は、検索可能な社内知識の一部となります。これにより、チームメンバーは過去の会話を検索し、「月曜日のロードマップ同期で何が決まったか?」といった質問に対して、転記からの引用付きで根拠のある回答を得ることができます。これは、情報共有の障壁を取り除き、チーム全体の知識レベルを向上させます。

さらに、Record Modeで生成された転記は、プロジェクト計画書や共有可能なドキュメントに簡単に変換できるため、チーム間の連携をスムーズにします。これにより、チームは常に最新の合意事項やアクションアイテムを共有し、プロジェクトの進行を円滑にすることができます。

5. Connectors & Record Modeのメリットと考慮事項

5.1 メリット

OpenAIのConnectorsとRecord Modeは、企業に多大なメリットをもたらします。

  • 生産性向上と時間削減:
    Connectorsによる自動化された情報収集とRecord Modeによる会議の自動要約は、従業員が手作業で行っていた時間を大幅に削減し、より価値の高い業務に集中できるようにします。

  • 意思決定の質の向上:
    社内データと連携することで、ChatGPTはより正確で包括的な情報を提供できるようになり、これにより企業はより迅速かつ的確な意思決定を下すことが可能になります。

  • 知識の民主化と活用:
    会議の録音や社内文書が検索可能な知識資産となることで、組織内の情報サイロが解消され、誰もが必要な情報にアクセスしやすくなります。

  • パーソナライズされたAI支援:
    ユーザーの過去の会話や接続されたアプリケーションのデータに基づいて、ChatGPTはより文脈に即した、パーソナライズされた応答を提供し、個々の業務ニーズに深く対応します。

  • 柔軟な統合:
    既存のITインフラストラクチャを変更することなく、様々なクラウドサービスや社内システムと連携できるため、導入障壁が低く、迅速なAI活用が可能です。

5.2 考慮事項(プライバシー・セキュリティ・制限)

これらの新機能には多くのメリットがある一方で、導入を検討する際にはいくつかの重要な考慮事項が存在します。

  • プライバシーとデータ利用:

    • モデル学習へのデータ利用:
      OpenAIは、ChatGPT Team、Enterprise、Eduプランのビジネスデータ(Connectorsを介してアクセスされた情報やRecord Modeの録音・転記を含む)を、デフォルトでモデル学習に利用しないことを明確にしています。これは、企業が機密データを安心して利用するための重要な保証です。

    • Plus/Proユーザーの注意点:
      しかし、ChatGPT PlusおよびProユーザーの場合、「Improve the model for everyone」設定が有効になっていると、Connectorsを介してアクセスされたデータがモデル学習に利用される可能性があります。これは、OpenAIがビジネスプランと個人プランで異なるデータ利用ポリシーを採用していることを示しており、Plus/Proユーザーは自身のデータ設定を慎重に確認し、必要に応じて無効化することが求められます。この階層的なプライバシーアプローチは、エンタープライズのデータガバナンス要件に対応するための戦略的な動きですが、個々のユーザーには設定管理の責任が伴います。

    • 音声ファイルの削除と転記データの保持:
      Record Modeで録音された音声ファイルは、転記が完了すると直ちに削除されます。一方、転記されたデータとそれに紐づくキャンバスは、ワークスペースのデータ保持ポリシーに従って保存されます。会話が削除された場合、キャンバスと転記は30日以内にシステムから削除されますが、法的に保持が義務付けられている場合はこの限りではありません。ただし、一部の報道では、著作権訴訟などの法的要件により、OpenAIが削除されたチャットデータを含むすべてのチャットデータを無期限に保持するよう義務付けられている可能性も指摘されており、この点は今後の動向を注視する必要があります。

  • セキュリティ対策:
    OpenAIは、エンタープライズレベルのセキュリティ対策を講じています。データは保存時(AES-256)および転送時(TLS 1.2+)に暗号化され、SOC 2 Type 2監査を完了しています。また、SAML SSOや多要素認証(MFA)によるアクセス管理、厳格なアクセス制御、バグバウンティプログラムの提供など、包括的なセキュリティフレームワークを構築しています。

  • 機能的制限:

    • Record Mode:
      現時点では、話者分離(Diarization)機能(異なる話者を識別する機能)はサポートされていません。これにより、会議の議事録において誰が何を言ったかを正確に追跡することが難しくなる場合があります。また、ビデオの記録は行われず、音声のみの記録となります。さらに、他者を録音する際には、ユーザーが手動で同意を得る責任があります。

    • Connectors:
      Connectorsの一部機能は、欧州経済領域(EEA)、スイス、英国では利用が制限されています。これは、各地域のデータプライバシー規制に起因するものであり、グローバル展開する企業にとっては、地域間の機能利用の不整合が生じる可能性があります。また、現時点では画像や視覚的なPDFの分析など、マルチモーダルサポートは提供されていません。

    • 一般的なAIの課題:
      AIの性質上、誤った情報(ハルシネーション)を生成する可能性は常に存在します。特にRecord Modeのテキストのみの出力では、元の会話の真実性を検証する手段が限られるため、重要な意思決定に利用する際には人間の確認が不可欠です。また、AIモデルの動作に透明性が欠ける点や、API利用に伴うコストやレート制限も考慮すべき要素です。

6. まとめ

OpenAIが導入した「Connectors」と「Record Mode」は、ChatGPTを単なる会話型AIから、企業の生産性と意思決定プロセスを劇的に変革する強力なビジネスアシスタントへと進化させる画期的な機能です。Connectorsは、Gmail、Google Drive、SharePointなどの主要なビジネスアプリケーションとChatGPTをシームレスに連携させ、社内データを活用したパーソナライズされた深い分析を可能にします。これにより、情報収集の効率化、競合分析の加速、コードレビューの最適化など、多岐にわたる業務でその価値を発揮します。特に、Model Context Protocol (MCP) を介したカスタムコネクタのサポートは、企業がChatGPTを独自の基幹システムに統合し、組織固有の知識ベースを最大限に活用するための道を開きます。

一方、Record Modeは、会議や音声メモを自動で文字起こしし、要約、主要なポイント、アクションアイテムを抽出することで、会議の効率を向上させ、議事録作成の手間を削減します。これにより、話された内容が検索可能な知識資産となり、チーム内の情報共有とコラボレーションを強化します。

これらの機能の導入は、OpenAIがエンタープライズ市場における競争優位性を確立するための戦略的な動きを示しています。Microsoft CopilotやGoogle Geminiといった競合がエコシステム内での統合を強化する中、OpenAIはChatGPTを「プラットフォームに依存しないAIユーティリティ」として位置づけ、多様なIT環境を持つ企業にも導入しやすいソリューションを提供しています。

しかし、これらの革新的なツールを最大限に活用するためには、データプライバシーとセキュリティに関する考慮事項を十分に理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。OpenAIは、ビジネスプランにおけるデータ利用の透明性を確保し、堅牢なセキュリティ対策を提供していますが、ユーザー側も既存のアクセス権限の尊重、地域制限、機能的制約(話者分離の欠如など)を認識し、自社のAIポリシーに沿った運用を行う必要があります。

ConnectorsとRecord Modeは、AIが単なる補助ツールではなく、日々の業務に深く統合された「ワークインターフェース」となる未来に向けた重要な一歩と言えるでしょう。企業がこれらの新機能を賢く導入し、管理することで、未開拓の生産性向上と競争優位性の獲得が可能になります。

7. 参考文献

New features in ChatGPT: Connectors and Record Mode

Model context protocol (MCP)

ChatGPT connector example usage

ChatGPT Business Features Now Include Gmail/Outlook Connectors

ChatGPT connector thinklet

ChatGPT Record Meeting Feature : What You Need to Know

New features in ChatGPT: Connectors and Record Mode

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