レポート
2024.10.04(金) 公開
解説と改善案を出してもらう
さて、前回の記事で、”企業弁護士”となったChatGPTに、契約書を確認してもらうプロセスをやってみました。
しかし、大事なのはあくまでも自社に不利にならないように契約を締結することになります。そこで、さらにそこから、「しっかりと担当社である自分が理解をし」、かつ「不利にならない提案をお願いしてみる」というのをやってみたいと思います。
1. 分からなければ解説を依頼
やはり契約書関連は難しいことが多いものです。そういう時は、決して見栄を張ることなく、遠慮なくChatGPTに聞いてみましょう。相手がAIなら恥ずかしくもないものです。
プロンプト例:
機密情報の定義が広範:開示者が機密である旨を明示しなくても、後から文書で指定することができる。また、社会通念上機密とされるべき情報も含まれます。これは、後から情報が追加される可能性があり、範囲が不明確になることがあります。
とのことですが、これの何が懸念になりえるか、中学生でも分かりやすく解説してもらえますか?
ここでも「期待値を具体的に伝えるプロンプト」が重要になってきます。そうです、「中学生でも」です。これにより、分かりやすさのレベルをコントロールすることができるのです。
ChatGPTからの回答例:
もちろんです。簡単に説明しますね。
機密情報の定義が広範なことの懸念点
どういうこと?
- 機密情報というのは、外部に知られてはいけない、企業の大事な情報のことです。
- 通常は、この機密情報を「これは機密情報です」と明示してから相手に伝えます。
問題点は?
- 後から追加される:この契約では、最初に機密情報として伝えなかった情報も、後から「実はこれも機密情報でした」と言って追加できるようになっています。
- 曖昧な基準:さらに、「社会通念上(一般的な常識から見て)機密とされるべき情報」も含まれるため、どこまでが機密情報なのかがはっきりしません。
具体例で説明
-
最初に分からない情報が増える:
- 例えば、友達に「これは絶対に秘密だよ」と言われた話だけを秘密にしますよね。
- でも、この契約だと、「あとで追加の話も秘密だよ」と後から言われる可能性があります。
- そうすると、どこまでが秘密か分からず、後から増えるので管理が大変です。
-
曖昧な範囲がある:
- 例えば、「普通の人が考えて秘密と思うことも含む」と言われると、人によって普通が違うので、何が秘密か判断が難しいです。
- 友達との間でも、「これは言っても大丈夫だろう」と思っていたことが、実は秘密だったと言われると困りますよね。
なぜ問題?
- 管理が難しい:何が機密情報か分からないと、その情報をどう扱っていいか分からず、誤って外部に漏らしてしまう危険があります。
- 責任が増える:後から「これも秘密だ」と言われたら、守らなければならない情報が増えて、管理する負担が大きくなります。
まとめ
後からどんどん機密情報が追加される可能性があると、どこまでを守ればいいか分からなくなるため、情報をきちんと管理するのが難しくなります。これが懸念点です。
どうですか?相当分かりやすいのではないでしょうか?
2. 提案も作ってもらおう
ここまでで、懸念点の列挙と解説をしてもらいました。ではせっかく理解も深まったところで、「懸念点を払拭できる提案」を作ってもらいましょう。
とはいえ、先ほど挙げてもらった懸念点の全てに対して修正をする必要はなさそうです。例えば「反社会的勢力の排除」に関する条項などは、原文のままにせざるを得ないようです。そこでこんな風に聞いてみます。
プロンプト例:
ありがとうございます。とてもよく分かりました。
では、1. 機密情報の定義と範囲(第2条)について、弊社(乙)にとってリスクが少ないようにしたいので、修正案を出してもらえますか?
そして、どこをなぜ変えたのかも教えてください。
ここでのポイントは、やはり理解をしたいので、変更した理由も聞いています。どのように提案をしてくれるでしょう?
ChatGPTからの回答例:
もちろんです。機密情報の定義と範囲について、弊社にとってリスクが少ないようにするための修正案を提案します。
修正案
修正前(原文)
(4) 機密情報
原則として、開示者より被開示者に開示・提供され、または被開示者が事実上知りえた、開示者の技術上、営業上の秘密に関する情報のうち、開示者が機密である旨を明示して開示したものをいう。明示がない場合であっても、開示者が、開示後14日以内に文書をもって改めて指定したときは、機密情報として取り扱われるものとする。
なお、機密である旨の明示がない場合であっても、社会通念に照らして、開示者の機密として保護されるべきことが明らかな情報については、機密情報として取扱われるものとする。但し、下記各号のいずれかに該当する情報は、守秘義務を負うべき機密情報から除外される。
- 提供をうけたときまたは事実上知りえたとき、既に公知であったもの
- 提供をうけた後もしくは事実上知りえた後、提供を受ける者の責によらず公知となったもの
- 正当な権限を有する第三者から、守秘義務を負うことなく、適法かつ適切な手段・方法により入手したもの
- 本件情報を一切使用せずに独自に開発したもの
- 日本国または日本国地方自治体の司法・立法・行政機関等により、法令の明確な根拠に基づき、提供を求められたもの
修正後
(4) 機密情報
原則として、開示者より被開示者に開示・提供され、または被開示者が事実上知りえた、開示者の技術上、営業上の秘密に関する情報のうち、開示者が機密である旨を明示して開示したものをいう。開示者が機密情報として指定する場合、開示時に明示するものとする。
なお、機密である旨の明示がない情報や、後から機密として指定された情報については、機密情報として取り扱われないものとする。但し、下記各号のいずれかに該当する情報は、守秘義務を負うべき機密情報から除外される。
- 提供をうけたときまたは事実上知りえたとき、既に公知であったもの
- 提供をうけた後もしくは事実上知りえた後、提供を受ける者の責によらず公知となったもの
- 正当な権限を有する第三者から、守秘義務を負うことなく、適法かつ適切な手段・方法により入手したもの
- 本件情報を一切使用せずに独自に開発したもの
- 日本国または日本国地方自治体の司法・立法・行政機関等により、法令の明確な根拠に基づき、提供を求められたもの
修正点の解説
-
後から指定された情報の除外:
- 修正前:開示者が、開示後14日以内に文書をもって改めて指定した情報も機密情報とする。
- 修正後:後から機密として指定された情報は機密情報として取り扱わない。
- 理由:後から追加される情報の範囲を明確にし、管理が難しくならないようにするため。
-
曖昧な情報の除外:
- 修正前:社会通念に照らして機密として保護されるべきことが明らかな情報も含む。
- 修正後:明示的に機密である旨の表示がない情報は機密情報として取り扱わない。
- 理由:何が機密情報か明確にすることで、情報管理の負担とリスクを軽減するため。
この修正により、弊社が取り扱う機密情報の範囲が明確になり、後から情報が追加されることによる混乱や負担を防ぐことができます。
たしかに良さそうですね!これを持って、自社の法務担当者に「こうしたいんだけどどう思う?」と聞けば、法務担当者も楽ですし、先方にも交渉しやすそうですね。
この記事の著者
DX推進コンサルタント
田村 雄気
エムスリーやアマゾンなど、データを活用することでビジネスをドライブさせてきたIT企業での勤務経験を活かし、DX推進の支援を行う。株式会社Anvee代表取締役。株式会社メディコレ取締役COO。
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