レポート
2025.07.18(金) 公開
収益シナリオの「分岐」を設計する
AIが真価を発揮するのは、1つの数字の正しさを追求する場面ではなく、「複数の可能性を同時に検証する」場面です。
たとえば、「この事業がうまくいく場合/普通に進む場合/苦戦する場合、それぞれの3年後の収益構造はどう異なるか?」という問いに対し、AIは瞬時に“条件を変えた3つのストーリー”を構築し、それぞれの売上・費用・利益・ROIを試算してくれます。
入力プロンプト

【ChatGPT回答例】
売上・利益シミュレーション(チャーン5%、初期顧客数100名)
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月額料金:5,000円
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利用者数の実質成長率:+4.5%(新規獲得10% – チャーン5%)
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36ヶ月目の月次売上:約195万円
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累計売上(3年間):約3,663万円
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累計利益(利益率70%前提):約2,564万円
損益分岐点の見通し
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固定コスト:月100万円を想定した場合
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利益が月100万円を超えるには、月売上 約143万円が必要(利益率70%から逆算)
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チャーン込みでこのラインに到達するのは28ヶ月目
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それ以前は赤字期間となるが、29ヶ月目以降は黒字幅が加速
感度分析の結果(一部抜粋)
チャーン率
5%
3%
0%
実質成長率
+4.5%
+6.7%
+10%
損益分岐点到達月
28ヶ月目
21ヶ月目
18ヶ月目
累計売上(36ヶ月)
約3,663万円
約4,472万円
約6,020万円
考察と次の一手
特に注目すべきは、「チャーン率のわずかな改善が、回収期間・利益額の両面に大きな影響を及ぼす」という点です。仮にNPS(顧客満足度)施策や年額プランの導入によりチャーンを3%以下に抑えられれば、黒字化までのスピードが7ヶ月前倒しでき、かつ利益額も約800万円上積みされる計算になります。
するとAIは、成長と解約のバランスから顧客数の推移を算出し、それに基づく売上高と累計利益、キャッシュフローの見通しを提示してくれました。加えて、「チャーン率を3%に抑えた場合は回収期間が1年短縮される」など、感度分析の示唆も含まれていました。
このように、AIを通じて「定量的な“if”の世界」を数パターン描いておくことは、意思決定の説得力を高めるだけでなく、将来的なリスクにも備えた柔軟な戦略設計を可能にします。
この記事の著者

シニアコンサルタント
福山 秀仁
20年以上にわたり、国内外の企業や自治体に対し、新規事業開発、マーケティング、組織開発、プロジェクトマネジメント支援を提供。AI・データ活用からUXデザイン、ブランド戦略、地域創生まで多様な分野に精通し、構想力と実行力を併せ持つ。NOB DATAでは、戦略設計と実装の両面からAIプロジェクトの推進を担当。
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