「一般社団法人データサイエンティスト協会 8thシンポジウム」に登壇しました
一般社団法人データサイエンス協会が主催する「一般社団法人データサイエンティスト協会 8thシンポジウム〜データサイエンスの最前線〜」が、2021年11月16日、17日に開催されました。データサイエンティスト協会九州支部のセッションとして、九州支部委員長を務めるNOB DATA代表の大城が、二日目の「令和から始めるデータ分析組織立ち上げ(福岡・大阪)」でモデレーターとして登壇しました。
本レポートでは、NOB DATAの顧客である九州電力様とオプテージ様の事例を中心に、地方におけるデータ分析チームの立ち上げについてお話のお届けいたします。
イベント公式サイト:
一般社団法人データサイエンティスト協会 8thシンポジウム〜データサイエンスの最前線〜
https://www.datascientist.or.jp/symp/2021/
大城:データ分析が日本ではじまって約10年、IT業界以外への広がり、デジタルトランスフォーメーションの需要と合わせていろいろな業種でニーズが起こってきています。本セッションでは、これからデータ分析を始めたい人への情報共有を目的にお話できればと思います。とくに、社内にデータサイエンティストが不在、DXをこれから始めたいという人を対象にお話を進めていければと思います。
まずはじめに、データサイエンティストの地域ごとの分布です。
ご覧のようにデータサイエンティストは8割が東京に集中しています。
その中でも東京以外の都市でデータサイエンスの事例が出てきています。今回は、九州を拠点に活動されいる九州電力様と、大阪に本社を構える格安スマホ事業「マイネオ」を展開しているオプテージ様の事例を紹介できればと思います。
――九州電力様でデータ分析チームを立ち上げるにいたった背景をお聞かせいただけますか?
九州電力・長田氏(以下、長田氏):課題は二つありました。
一つ目は、定量分析からのPDCAは行っていましたが、勘と経験と度胸に頼っていた状況です。しかもそれをひとりで行っていました。そこからマーケターとデータ分析者が並走してPDCAを回すを行えるようにすることです。二つ目は、社内外のデータを最大活することです。会員情報、WEB閲覧、広告効果、アプリといったデータある中でなかなかそのデータを活用しきれていない状況がありましたので、データに基づいてマーケティングの高度化と顧客満足を向上を実現して電力自由化の競争に生き残ることになります。
データ分析チームの構築にあたっては、社内で公募してメンバーを募りました。ただ、スキルや教育といった点では自社でできることは限られていますので、NOB DATAさんに依頼して教育していただきました。
――オプテージ様はいかがでしょうか?
オプテージ・天野氏(以下、天野氏):三つほど挙げられます。
一つ目は、観、経験、度胸に頼った企画であったこと。二つ目は、データ分析は大事だが、自社の価値観に基づいて施策を実行するというとことはぶらさないので、分析を外注で丸投げせず、あくまで自社で判断は行うというという方針であったこと、しかし、自社内にはしっかりとした分析を行う人員が限られていたこと、これが三つ目になります。
そうしたなかで、専門的なデータ分析をするために社外からのサポートを必要としていました。大城さんが代表を務められているNOB DATAは、分析方法のトレーニングから、分析者の育成までをお願いできますので、自社で分析をしながらそのサポートをしていただくパートナーにはぴったりだと思いNOB DATAさんと協業することになりました。
――データ分析に関する具体的な取り組みを教えていただけますか?
長田氏:まずは、料金プラン分析です。解約率や解約特性情報の分析を行いました。専任化でビッグデータ分析が可能になり、短期間で多くのデータ分析ができるようになりました。
二つ目は、オール電化獲得のためのエリア分析です。エリア分析の可視化ツール開発。営業拠点ごとに担当エリアのオール電化の普及実績とポテンシャルの分析を行いました。
三つ目は、オール電化獲得に向けたデジタル広告と販売店の連携です。広告実績を分析して効果の高い媒体に絞り、費用対効果の検証を行った。販売店と連携しキャッシュバックキャンペーンを行いました。
四つ目は、A/Bテストによる電化PRチラシの訴求ポイントの確認です。オール電化の快適、安全、経済性テーマを分けたチラシを作成し、異なるWEBへの流入QRコードを設置してどのテーマのチラシが効果を生んだか検証しました。
そして五つ目が、顧客属性・行動データを活用した解約予測モデルの構築です。解約者にはどのような特徴があるのか、解約に影響するデータを抽出し、解約を防止するモデルの作成しました。
天野氏:まずは「簡易獲得モデル」です。以前は、過去の実績や競合他社の事例を参考にキャンペーンを組んでいました。なんとなく効果が出たとしても、具体的にどれほどの獲得につながったのかがわかりませんでした。NOB DATAさんとのトレーニングで学んだ重回帰分析をしたところ、効果がわかるようになりました。
次に「継続期間分析」です。スマホ事業者にとって、契約していただいたら終わりではなく、長く継続してお使いいただくことが重要です。なんとなく「新しい端末を購入すると継続期間が延びる」ということはわかっていましたが、どのくらい?何をすると?が図れていませんでした。データ分析を行うことで、キャンペーンの内容や費用によって、どのくらい効果がでるかわかるようになりました。
さらに、データ分析者の育成です。NOB DATAさんのトレーニングにより、データが多く処理しきれない、そもそもがんばって分析して本当にこの結果を信用していいのかわからないという課題を抱えていたわずか数人に分析者が今では12人もが研修に参加するに至りました。そのほとんどが分析やプログラミングは初心者です。NOB DATAさんのトレーニングにより、今では自分たちでPythonを活用して自走するデータ分析チームになりました。
――参加者の方から「データ分析者の採用は考えなかったのか?」という質問が来ていますがいかがでしょうか?
長田氏:いちからチームを立ち上げていく過程で自分たちが学べるという点を考えて、社内の人材を活用することにした。
天野氏:採用は適切な人材をとれる確率が低いので、スピード感を重視して外部パートナーに伴走してもらいつつ、自分たちでやることにした。
――データ分析チームを構築してよかったことはどんなことでしょうか?
長田氏:やはりデータ分析を行うと効果的な施策ができるという点ですね。見えていなかった顧客の考えていることがわかってきた、施策の効果が定量的に示せるようになったことで、社内での合意も得やすくなりました。
天野氏:現場から分析をすすめていることがよかったですね。ユーザーの声をダイレクトに聞いている現場の担当者がデータ分析を行うことで、分析結果をどう解釈するのかという目利きが働きます。ユーザーの声を知っているだけではだめ、データ分析をうのみにしてもだめ。大事なのは、ユーザーの気持ちとデータ分析を掛け合わせることです。そして、外注ではなく社内の人間で進められることで、何か課題を見つけたときに自分たちですばやく分析して企画に結び付けられる、そういう体制になっていることが効果を生むデータ分析チームの姿だと思います。
――逆に苦労した点はいかがですか?
長田氏:やりたいデータ分析への思いはあったが、どんなスキルがいつのか、どういう技術的環境を構築すればいいのかわからなかった点ですね。そこは外部のアドバイザーにご支援いただいて実現していきました。
天野氏:社内の信頼を得るまでは、苦労がありました。最初のうちは、現場のいち担当がやってることなので「本当にこれで合っているのか?」と言われるケースがありました。会社としては予算を投下する重要な判断の根拠となるものですがから当然です。専門家であるNOB DATAさんからお墨付きがあったことで、社内で話を通すことができました。
――定量的な結果を積極的に取り入れつつ、定性的なマイネオの価値、情緒的なつながりを大切にされているのは大変ユニークな取り組みだと思います。ありがとうございました。