レポート

2024.04.23(火) 公開

GPTsでカスタムAIを実現:あなただけのChatGPTを作る完全ガイド

レポート NOB DATA株式会社

1. 導入

1.1 GPTsとは何か?

ChatGPTの中核の技術であるGPT(Generative Pre-trained Transformers)は、OpenAIによって開発されたAI技術の最先端を行く一連のモデルです。しかし、ここで紹介する「GPTs」は、これらのモデルを基にした、よりカスタマイズ可能な形態を指します。具体的には、ユーザーが自分のニーズに合わせてChatGPTの振る舞いを調整できる、新しい形式の技術を指しています。この技術により、特定のタスクやトピックに特化したChatGPTのバージョンを、コーディング知識がなくても簡単に作成できるようになります 。

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GPTs FAQ

1.2 GPTsの重要性と可能性

GPTsの最大の魅力はその柔軟性にあります。教育からエンターテイメント、ビジネスの自動化まで、GPTsは様々な分野でパーソナライズされたAIアシスタントの可能性を広げます。例えば、特定の科目を教えるための教育ツールとして、あるいは顧客サービスの自動化、創造的なデザインの提案など、多岐にわたる用途で使用されています。

この技術の導入により、AIの利用がさらに身近なものとなり、個人や企業が独自のニーズに合わせてAIを形成し、活用する道が開かれました。また、GPTsを通じて、AI技術が社会のあらゆる層にわたってよりアクセスしやすく、理解しやすいものになることが期待されています。それにより、技術の民主化が進み、より多くの人々がAIの潜在能力を引き出し、その恩恵を享受できるようになることでしょう。

GPTsの展開は、AIと人間の関わり方に新たな節目をもたらしています。これにより、AIは単なるツールを超え、個人の創造性や生産性を支援するパートナーへと進化しています。未来において、GPTsは学習、仕事、日常生活の各面で、私たちの能力を拡張し続けることが期待されています。

2. GPTsの基本

2.1 GPTsの概要

GPTsは、OpenAIが提供する技術の一つで、既存のGPT(Generative Pre-trained Transformer)モデルをベースに、ユーザーが特定の目的やタスクに合わせてカスタマイズできるようにしたものです。GPTsを使うことで、ユーザーは自分だけのAIアシスタントを作成でき、これによりChatGPTがさらに幅広い用途で利用できるようになります。これは、特に専門知識を持つユーザーや、特定のニーズを持つ企業にとって、非常に有用な機能です。

2.2 GPTとの違い

GPTとGPTsの主な違いは、「カスタマイズの柔軟性」にあります。従来のGPTモデルは非常に強力で、幅広い一般的なタスクに対応できますが、ユーザーが特定の目的に合わせて振る舞いを微調整することはできませんでした。正確には、カスタム指示(custom instructions)やプロンプト内で指示しなくてはいけませんでした。一方で、GPTsはユーザーがその振る舞いを自分の目的やタスクに合わせてGPTsを構築時に調整できるため、より専門的な応答や特化した情報提供が可能になります。

例えば、特定の業界用語を理解し、その分野に特化した知識を提供するChatGPTバージョンを作成することが可能です。また、教育用途に特化させたい場合は、学習者のレベルに応じて教材をカスタマイズし、理解を深めるための質問や例を提供するように設定することもできます。

3. GPTsの作成プロセス

3.1 GPT Builderの使用開始

GPTsの作成は、GPT Builderと呼ばれるユーザーフレンドリーなインターフェイスを介して行います。GPT Builderを利用することで、特別なコーディングスキルや深いAI知識がなくても、誰でも簡単に自分専用のGPTを作成できるようになります。プロセスは、基本的にはChatGPTとの対話形式で進み、ユーザーはGPTに求める振る舞いや知識、特定の機能に関する指示を与えていきます。

使用開始にあたっては、OpenAIのプラットフォームにログインし、「Explore GPTs(図1)」のセクションにアクセスすることから始めます。アクセスを実行すると、GPT storeのトップ画面に遷移します。こちらでは、公開されているGPTsが利用することができます。こちらについては、前回のレポート(https://nobdata.co.jp/report/chatgpt/07/)を参照ください。GPT storeのトップ画面からGPT Builderを起動し、新しいカスタムGPTの作成プロセスを開始していきます(図2)。画面の指示に従い、基本情報を入力し、カスタマイズを進めていきます。

レポート NOB DATA株式会社 図1 GPTsの選択 レポート NOB DATA株式会社 図2 GPTs Builderへのアクセス

3.2 カスタマイズ可能な機能と指示の設定

GPT Builderでは、ユーザーは様々なカスタマイズが可能です。これには、特定の知識の追加、対話のスタイルの設定、特定のタスクへの特化、そして「ウェブ検索」の有効化や「画像生成」などの機能の組み込みが含まれます。

また、カスタマイズの過程では、ユーザーはGPTに特定の「応答」や「知識」を持たせることができます。これは、データ分析、言語学習、教育支援、エンターテインメント提供など、特定の能力やタスクの実行を指します。各知識は、ユーザーからの具体的な指示に基づいてカスタマイズされ、GPTの対話能力を高め、より特定の用途に適したものにします。

GPT Builderを使用する際のポイントは、GPTに与える指示が明確で具体的であることです。目的や期待する応答のタイプ、利用される知識の範囲など、詳細に設定することで、より精度の高いカスタムGPTを作成できます。このプロセスを通じて、ユーザーは自分だけのAIアシスタントを設計し、様々なタスクに対応する独自のツールを手に入れることができます。

4. デモンストレーション:GPTのカスタマイズ

GPTsのカスタマイズプロセスを理解するために、実際のデモンストレーションを行います。以下の例では、教育目的で使用するカスタムGPTを作成することを目標としています。今回のGPTは、中学生向けの基礎数学の質問に答えることができるように設計しています。

GPTs Builderの初期画面は、図3のようになっています。GPTsの作成方法には、基本的に、設定条件を入力することでカスタマイズしていきます。この設定条件の入力方法が2通りあり、一つは、直接入力していくもの、もう一つは、GPTと対話することで、GPTが設定項目を自動で入力していくものです。以降では、2通りの方法を説明していきます。

レポート NOB DATA株式会社 図3 GPTs Builder初期画面

4.1 設定条件(Configure)を利用したGPTs作成方法

図3で、「Configure(図4-❶)」を選択すると、GPTsの設定入力画面になります。ここでは、設定画面を利用した作成方法を説明します。設定項目入力によるGPTsの作成では、図4の❷〜❾の各項目を入力していきます。

レポート NOB DATA株式会社 図4 ConfigureによるGPTsの作成

1) Configureを選択
Configure(図4の❶)を選択することによって、「設定項目」でのGPTsの作成画面に切り替わります。

2) アイコンの作成
GPTsのアイコンを設定できます。アイコンの箇所をクリックすると、画像のアップロード、またはChatGPTの画像生成機能である「DALL-E3」での生成画像を設定できます。(図4の❷)

3) GPTsの名前の設定
作成するGPTsは、カスタマイズされたGPTであり、それぞれのオリジナルの名前を設定することができます(図4の❸)。今回は、「基礎数学チューター」を設定しました。

4) 概要(Description)の設定
「基礎数学のチューター」の概要を設定します(図4の❹)。概要は、GPTsのチャット画面を開いた際に、ユーザーにGPTsを説明するためのものです。今回の設定内容としては、「中学生向けの基礎数学チューターです。質問に答えたり、問題を作成・解答の解説などを行います。」としています。

5) 説明(Instructions)の追加
カスタマイズをより効果的にするために、採用する知識をプロンプトで説明を行います。数学の基礎理論や解法については、GPTが既に内容を学習済みのため、対象の範囲を記入するなどして、専門性を高めます。(図4の❺)今回の設定内容としては、次のようにしました。

中学1年生:「正負の数」「文字と式」「方程式」「比例と反比例」「平面図形」「空間図形」「データの分析と活用」
中学2年生:「式の計算」「連立方程式」「1次関数」「平行と合同」「三角形と四角形」「確率」「データの比較」
中学3年生:「多項式」「平方根」「2次方程式」「関数 xの2乗に比例するy」「相似な図形」「円」「三平方の定理」「標本調査」

上記を中学生では習います。中学生から、質問や問い合わせがあるので、丁寧に説明してください。また、質問がわかりづらい時は、参考例などを挙げて逆質問をして、質問の意図をはっきりさせてから回答してください。」

6) 使用時のプロンプト例を入力する(Conversation starters):
質問に答える、解説を提供する、例を挙げるなどのスキルを選択し、このGPTに与えます。これにより、GPTsに対して、ユーザーがどのように利用するかをチャットの開始画面にテンプレートとして表示させることができます。(図4の❻)今回の会話には次の内容を入れました。

• 1年生の文字式の問題に困っています。
• 三平方の定理の計算がよくわかりません。
• 次のような問題の解法を教えてください。
• 中学2年生で習うレベルの、連立方程式の問題を作成してください。

7) 知識(Knowledge)の追加:
現段階(2024年3月末時点)でのGPTs作成の項目として、ファイルをアップロードして知識を与えることができます(図4の❼)。本機能は、デフォルトではグレーアウトしており、使用することができませんが、図4の❽にある、機能(Capabilities)のうち「Code Interpreter」を有効にすることで、使用可能となります。今回の例では、特にファイルアップロードは使用しませんが、対象の数学の問題集などをデータで登録するなどすると、さらに精度が上がることが期待されます。

8) 機能の有効化選択
GPTsは、ChatGPT同様に「Web Browsing」「DALL-E Image Generation」「Code Interpreter」を機能として設定することができます。チェックボックスで必要な機能を有効にして実行します。今回は、Web BrowsingとDALL-E Image Generationの2つを有効にしました。

9) 外部APIとの連携機能
今回は説明を省略しますが、外部APIとの連携を設定する機能を有しております。これにより更なるカスタマイズが可能となっています。

10) GPTsの作成の実行
各種設定が完了したら、「Create」ボタンをクリックし、作成を実行します(図4の➓)。実行する際は、図5のように作成するGPTsの公開範囲を設定できます。今回は、デモンストレーションのため、個人利用の「Only me」を選択します。

レポート NOB DATA株式会社 図5 公開範囲の設定

作成したGPTsを開くと、次のようになります。これにてGPTsの作成は完了です。作成したGPTsについては、実際に使いながら、試行錯誤することによって更に理想的なGPTsに近づいていきます。

レポート NOB DATA株式会社 図6 作成したGPTsの画面

4.2 GPTとの対話によるGPTs作成方法

GPTs Builderの初期画面は、対話によってGPTsを作成するための画面となっています。目的を定めて、質問に順に回答をしていきます。質問内容は、次のような内容となっていました。

1) 作成するGPTにどのような役割や目標を持たせたいか
2) GPTsの名前についての質問
3) GPTsのアイコンの提案(DALL-E image create利用)
4) 追加で設定したい項目についての確認

チャットでは、対話を通じてGPTs作成の設定項目を自動作成しています。内容はConfigureの方で確認できます。対話完了後は、Configureをクリックして、内容に齟齬なないかを確認してください。修正する場合は、直接項目を修正します。Configureの設定が完了したら、「Create」ボタンをクリックして、GPTsを作成実行しましょう。

レポート NOB DATA株式会社 図7 対話によるGPTsの作成

5. GPTsの応用例

5.1 教育

教育分野では、GPTsは個別の学習支援ツールとして非常に有効です。例えば、前述のデモンストレーションのように、特定の科目に特化したGPTを使用して、生徒が理解を深めるための質問に答えたり、新しい概念を教えたりすることができます。また、言語学習においては、会話練習や文法の解説に利用することで、学習者が自然な言語使用環境を模擬できます。さらに、GPTは、教材の自動生成や模擬試験の作成にも応用可能です。

5.2 ビジネス

ビジネスの世界では、GPTsは顧客サービスの自動化、製品のマーケティングコンテンツ生成、市場分析のサポートなど、多岐にわたる用途があります。カスタマイズされたGPTを使用することで、顧客からのよくある質問に対する迅速かつ一貫した回答を提供することが可能になります。また、ブランドのトーンやスタイルに合わせたコンテンツの生成も、GPTsの能力の一つです。市場のトレンドを分析するために、関連するデータセットに基づいてインサイトを提供するGPTの開発も考えられます。

5.3 個人的な利用

個人的な利用においては、GPTsは日常生活の効率化や趣味活動の支援に貢献できます。例えば、レシピ提案、健康管理アドバイス、旅行計画の支援など、個人の興味やニーズに合わせた情報提供が可能です。また、創作活動においても、物語のアイデア生成や詩の作成など、クリエイティブなプロセスを刺激する用途にGPTsを活用することができます。

これらの応用例からも分かるように、GPTsのポテンシャルは非常に広範であり、教育、ビジネス、個人的な利用の各分野において、私たちの生活や働き方に革新をもたらす可能性を秘めています。特にGPTsを利用した具体的な事例や詳細な情報については、OpenAIの公式サイトや関連する教育・ビジネス技術の専門メディアから得ることができます。

6. GPTsの共有と公開

6.1 GPT Storeの紹介

GPT Storeは、ユーザーが作成したカスタムGPTを公開し、共有するためのプラットフォームです。このストアは、OpenAIによって設立され、個々の開発者や企業が自分たちのGPTを広く一般に公開できるようにすることを目的としています。GPT Storeを利用することで、ユーザーは自分たちの作成したGPTを簡単に他の人と共有でき、使用者からのフィードバックを得ることが可能になります。また、優れたGPTはストア内で注目され、より多くの人々に利用される機会を得ることができます。

GPT Store内では、教育、ビジネス支援、エンターテイメントなど、さまざまなカテゴリーのGPTが公開されています。これにより、特定のニーズを持つユーザーは、目的に合ったGPTを簡単に見つけることができます。GPT Storeは、GPT技術の普及と共有を促進し、より多くの人々がAIの恩恵を受けられるようにするための重要なステップです。

6.2 GPTsを公開するメリット

GPTsを公開することには、いくつかの重要なメリットがあります。まず、自分の作成したGPTを広く共有することで、より大きなコミュニティからのフィードバックや提案を得ることができます。これにより、GPTの品質を向上させるための貴重なインサイトを得ることが可能になります。

また、GPT Storeなどのプラットフォームを利用することで、自分の作成したGPTを広く認知してもらうことができます。これは、特に開発者や企業にとって、自分たちの技術やサービスを宣伝し、新たなユーザーや顧客を獲得するための有効な手段となります。

さらに、特定のGPTが大きな人気を博した場合、それを通じて収益を得る可能性もあります。OpenAIは、GPT Storeを通じて、優れたGPTの開発者に対して収益分配のプログラムを提供しています。これにより、開発者は自分たちの努力が報われるだけでなく、さらなるGPT開発への投資につながる可能性もあります。

GPTsを公開することは、コミュニティとの協力を促進し、AI技術の進化に貢献するという点でも重要です。共有されたGPTは、新たなアイデアや応用の触媒となり得るため、GPT技術の発展と普及に大きく貢献することができます。

7. プライバシーと安全性

7.1 ユーザーのデータ管理

GPTsを利用する際、ユーザーのデータ管理は最も重要な懸念事項の一つです。ユーザーがGPTと交換する情報は、個人情報や機密情報を含むことがあります。そのため、OpenAIはユーザーデータのプライバシー保護と管理に関して厳格なポリシーを設けています。

ユーザーのデータ管理に関しては、ユーザーが提供した情報は暗号化され、安全なサーバーに保存されることが基本とされます。さらに、ユーザーは自分のデータに関して高度な制御を持つことができ、必要に応じてデータの削除やエクスポートを行うことが可能です。また、GPTsの開発者は、ユーザーのデータにアクセスすることなく、GPTの性能向上やカスタマイズを行うことが求められます。

7.2 安全性への対策

GPTsの利用においては、不適切なコンテンツの生成やユーザーを誤解させる情報の提供を避けるため、安全性への対策も極めて重要です。このため、OpenAIでは、生成されたコンテンツの監視とフィルタリングに関して複数の対策を講じています。

具体的には、不適切な内容や有害な情報がフィルタリングされるように、事前に訓練されたモデルを使用してコンテンツを評価します。このプロセスには、AIによる自動評価と人間によるレビューの両方が含まれ、精度を高めています。また、ユーザーは、不適切または問題のあるコンテンツに対して報告することができ、これによりコミュニティ全体の安全性の向上に貢献しています。

さらに、GPTsの開発者やユーザーは、特定のガイドラインや使用ポリシーに従うことが要求され、これには倫理的な利用の促進や不適切な利用の防止が含まれます。OpenAIはこれらの対策を通じて、ユーザーのプライバシー保護と安全なAIの利用環境の確保に努めています。

8. まとめ

8.1 GPTsの潜在力と影響

GPTsの導入は、多様な分野でのAIの利用を拡大し、その潜在力を広げるものです。教育、ビジネス、個人的な利用における事例は、GPTsが持つ革新的な能力と、それがもたらす影響の一端を示しています。GPTsを利用することで、カスタマイズされたAIソリューションを容易に作成し、特定のニーズに合わせてAIの応用を最適化することが可能になります。

さらに、GPTsは、AIと人間の関わり方を再定義することにも寄与しています。これにより、AIはよりアクセスしやすく、理解しやすいものになり、私たちの生活や働き方を豊かにするためのツールとしての地位を確立しています。GPTsのさらなる発展と普及は、これからの社会や技術の進化において重要な役割を果たすことでしょう。

8.2 さらなる情報とリソース

GPTsに関してさらに学びたい場合、OpenAIの公式サイトや関連する技術ブログは、最新の情報やリソースを得るための優れた出発点です。OpenAIの公式サイトでは、GPTsの最新の開発状況や、具体的な利用方法についての詳細な情報が提供されています。また、技術コミュニティやフォーラムでは、GPTsの活用事例や開発に関する知識が共有されており、同じ興味を持つ人々との交流を通じて新たなアイデアを得ることができます。

このほかにも、AIと機械学習に関するオンラインコースやワークショップが多数提供されており、GPTsの開発や応用に関するスキルを学ぶことができます。GPTsの潜在力を最大限に引き出し、その影響を社会に広げるためには、継続的な学習と実践が不可欠です。