レポート

2024.09.17(火) 公開

AI博覧会Summer2024参加レポート

レポート NOB DATA株式会社

2024年8月29日と30日にベルサール渋谷ファーストで開催された「AI博覧会Summer2024」に参加しました。この博覧会には、多くのスタートアップ企業が参加しており、生成AIを中心とした技術やサービスが多数展示されていました

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博覧会の会場は、生成AIに関する展示が特に盛り上がりを見せており、各ブースには多くの参加者が集まっていました。出展企業の中には、生成AIを活用して何が実現できるかを具体的に示す展示が多く見られ、訪れた人々の関心を大いに引きつけていました。
一方で、具体的な活用例や効果が明確でないブースは、やや盛り上がりに欠ける場面も見受けられました。これにより、生成AIがすでに一般的に理解されている技術となっていることを強く感じました。

展示内容としては、議事録作成やチャットボットなどの定番テーマだけでなく、製造業やIoTとの連携を提案する企業もあり、AI技術の適用範囲が広がっていることが伺えました。

また、AI教育に特化した企業も多く出展していましたが、その多くが生成AIを強調しており、今後の教育や研修においても生成AIが重要なテーマとなることが予測されます。これは、企業や参加者が今後のAI技術においてどこに重点を置こうとしているのかを感じさせられました。

会場では、展示のほかにカンファレンスも開催されており、多くの回で満席になっていました。今回は、特に生成AIをビジネスでより活用するにはどうするのかを紹介しているカンファレンスを2つ紹介します。

1. 参加カンファレンスその1:生成AIによるビジネス価値の創造:日本企業の勝ち筋とは?

このカンファレンスでは、日本企業におけるAIのビジネス価値創造についての議論が行われました。一般社団法人Generative AI Japanのメンバーである複数の専門家が登壇し、それぞれの企業や団体でのAI導入の現状や課題、また今後の展望について共有しました。

2023年に入り、ChatGPTなどのAI技術が急速に普及しましたが、それに伴う技術的な変化も早く、企業は技術のキャッチアップに苦労しています。AIを業務に適用するためには、安全で効果的な導入が重要であり、リテラシーの向上や社内教育が鍵となっています。

私自身、社内で生成AIの利用が浸透しない・最初は使っていたのにすぐに止まってしまう。というお話をよくいただきます。そのため、登壇者の内の1社であるパーソルホールディングス社(以下、パーソル)の事例はとても興味深かったです。

以下、パーソルの事例を紹介します。

パーソルでは、社内でAI技術の利用を促進するために、安全な環境を整備し、リテラシーを向上させることが最も重要であると考えました。

そこで、AI技術を業務で安心して活用できるよう、社内に安全な利用環境を構築するとともに、一般社団法人生成AI活用普及協会が提供する「生成AIパスポート」試験の団体試験を200名以上の社員が受けることで、知識を深め、業務でのAI活用の幅を広げています。

また、社内で学びのコミュニティを形成し、社員同士が知識を共有し合う場を提供しています。さらに、定期的に研修や活用イベントを開催しており、例えば「サマーフェス」というイベントでは、様々なAI関連の学びのプログラムを実施し、社員が楽しみながら学べる環境を作っています。

このように、IT系ではない大企業がここまで積極的に、生成AIの活用を社内で広めていかれている姿はとても感銘を受けましたし、多くの企業で真似できるのではないかと感じました。

カンファレンスの後半では、AIの未来展望として、AIは今後さらに進化し、ビジネスのあらゆる領域に浸透すると予測されています。AIを使いこなす企業とそうでない企業との間に大きな差が生まれる可能性があるため、各企業は積極的にAI技術を導入し、企業成長のチャンスを捉える必要があると指摘されています。

そのためにも、日本では送れている大企業とスタートアップとのコラボレーションやM&Aを進め、イノベーションを促進することが必要という指摘には考えさせられました。

2. 参加カンファレンスその2:企業向け生成AIの次なる一手:データ活用はRAGから「エージェント」へ

このカンファレンスでは、フライウィール社の事業責任者が、企業向け生成AIの活用と次なる一手についてプレゼンテーションを行いました。

生成AIはすでに多くの企業で導入されていますが、商用利用や社会実装に至らないケースが多く、約90%が試験段階で止まってしまうという調査結果があります。

技術的、人的、組織的な課題が存在し、特に生成AIを運用するためのエンジニアリングやデータの精度が重要です。

生成AIの性能を高めるためには、社内のデータを効果的に利用する必要があります。そのために、データを学習させるためのファインチューニングやプロンプトエンジニアリング、さらに社内外のデータを活用するRAG(Retriever-Augmented Generation)の重要性が強調されました。

さらにRAGだけでなく、エージェントという考え方が重要になっていくと考えられています。
エージェントとは、ユーザーの意図を解釈し、タスクを実行する自律的なシステムのことです。RAGと生成AIを組み合わせ、業務自動化や最適化を図ることで、より複雑なタスクにも対応できるようになります。

ある製造メーカーの事例では、不具合発生時の対応方法を迅速に探索・リカバリーするために、過去のデータを活用してエージェントが対応するシステムを構築しました。この取り組みにより、業務効率の向上と再発防止策の策定が進められています。

また、技術としても単純に生成AIをそのまま使うというだけでなく、マニュアル検索との組み合わせや、自動評価の実施といった多くの場面で活用できそうなものがありました。
ぜひ、この様な展開手法は真似していってみたいと思います。

3. まとめ

AI博覧会のような、多くの企業がブースを構えて来場者と商談をする形の展示会には、よく参加しています。その会を追うごとに、生成AIという言葉が強くなり、さらに技術としての売り込みではなく、議事録生成やコールセンター業務など、具体的な業務に対して対応するといったブースがより盛り上がっているように感じています。

それは、ある意味では生成AIの裾野が一気に広がって、これまで関心がなかった企業も、そろそろ導入を考えようという動きが出てきているとポジティブに捉えています。

一方で、カンファレンスでもありましたが、先行して導入してきた企業においても生成AIの利用が続かないという声は、様々な場面で聞こえてきます。
カンファレンスでパーソルが紹介していたような取り組みが、多くの企業で出来ればいいのですが、中々自社だけではそこまで行うのは難しいとなってしまい、生成AIを入れたはいいが使わないとなってしまうのではないかと、いまの流れをネガティブに感じてしまっている部分もあります。

NOB DATAでは、これまでも様々な企業に生成AIに関するシステムや、サービスを導入してきました。
今回、AI博覧会で紹介されているようなツール・サービスはもちろん、生成AIを業務で使う社員を増やしていくためにはどうするべきかといった課題に対しても、社内研修・セミナーによって解決を図ってきました。

生成AIの広がりによって、今後増えていく可能性がある「生成AIを入れたはいいが使わない」課題に対しても、そうならないように・なってしまっても解決できるように、改めてよりよい生成AIに関するシステム・サービスを提供しています。

この記事の著者

レポート NOB DATA株式会社

データサイエンティスト

烏谷 正彦

AI系のスタートアップ企業で、データサイエンティストとしてビッグデータを用いたアナリティクスを提供。現在は、生成AIのソリューションや教育を提供するフリーランスとして活動。最近の趣味は、銭湯に向けてランニングをすること。NOB DATAでは、生成AIまわりのリサーチや情報発信を担当。