レポート

2024.12.26(木) 公開

Generative AI Conference 2024 参加レポート

レポート NOB DATA株式会社

今回は、日経ビジネスが主催する「Generative AI Conference 2024」に参加してきました。当イベントは、生成AIにテーマを特化して、ビジネスリーダーがいかにして生成AIに向き合っていくかを様々な企業のリーダーが話しています。

その中で、基調講演・特別講演から、印象に残った2つをご紹介します。

1. 基調講演:AIで切り拓くビジネスの未来~楽天のAI-nizationで世界に革命を~

基調講演では、楽天グループの専務執行役員 CAIDO (Chief AI & Data Officer)であるティン・ツァイ氏から、楽天グループのAIに関する取り組みを中心に、日本が持つイノベーションの歴史と生成AIの可能性が語られました。

生成AIは、音声や映像、広告、オートメーションといった多様な分野で活用が進んでおり、企業や個人が新しい領域に進出するための強力なツールとして注目されています。特に、カスタマーサービスや製品開発において、生成AIを活用することで顧客満足度を向上させ、継続的な改善を実現する「フライホイール効果」を最大化できる点が強調されました。

また、生成AI技術を実務に適用する際の課題として、大規模言語モデル(LLM)のトレーニングや運用にかかるコストや技術的な複雑さが挙げられました。実際に運用している観点からも、24時間365日のサイバーセキュリティや信頼性の確保や、モデルを迅速に改良するために実際のデータを活用することの重要性が示されました。

技術革新が急速に進む中で、企業間やオープンソースコミュニティとの協力が重要であり、日本のビジネスリーダーは生成AIの潜在力を活用して国際的な競争力を高めるべきであると提言されています。生成AIの進化がもたらす未来は非常に大きな可能性を秘めており、企業はそれを活用することで新しい価値を創造し、グローバルな成功を収めるチャンスを掴むべきだと結論付けられました。

2. 特別講演:生成AIを活用したビジネス変革に導くための導入のススメ

本セミナー「生成AIを活用したビジネス変革に導く導入のすすめ」では、生成AIがもたらすビジネスの可能性とその導入に向けた具体的な方法について、アイレットのDX開発事業部 事業部長の石川天行氏が解説しました。

生成AIは2027年には1,200億ドル(1ドル=150円換算で18兆円)規模の経済価値を生み出すと予測されており、特にその進化スピードは目覚ましいものがあります。一方で、日本の生成AI利用率は他国に比べて低く、今後の市場拡大と活用の余地が大きいとされ、積極的な導入が求められています。

セミナーでは、複数の具体的な事例が紹介されました。

  • 第一興商:カラオケの楽曲リクエストデータの名寄せ作業を自動化することで業務負荷を削減し、作業時間を大幅に短縮

  • A社(名称非公開):動画コンテンツの検索を効率化するために生成AIを活用し、検索時間を削減

  • ラクトジャパン:食品輸入業務において多種多様なドキュメント検索を簡略化し、顧客対応のスピードアップを実現

  • 人・夢・技術グループ:情報収集・分析プロセスを標準化することで、業務の効率化と品質向上を達成

これらの事例を支える技術として、Google CloudやVertex AIが挙げられ、特にプロンプトエンジニアリングの重要性が強調されました。

適切な設計により、生成AIの精度を高め、業務やサービスにおける具体的な課題を解決することが可能です。生成AIの活用は単なる業務効率化にとどまらず、顧客体験の向上や新たな価値創出をもたらします。特に、迅速な情報提供や個別ニーズの把握を通じて、より深い顧客理解と付加価値の高いサービス提供が実現可能となります。

最後に、生成AIが未来のビジネスにとって強力なパートナーとなる可能性を指摘し、テクノロジーを活用して顧客と共により良い未来を創造していくことの重要性を訴えました。

3. まとめ

レポートでは、楽天グループと、アイレットの2社の講演をまとめましたが、他にもGoogleやDataiku Japanといったテクノロジーを提供する側の企業、ライオン、ベネッセホールディングス、東京ガスといったテクノロジーを利用する側の企業と、様々な企業から非常に面白い話を聞くことができました。

特に、私は普段どうしてもテクノロジーを提供する側におり、講演も多くがそのような企業の話を聞いているのですが、テクノロジーを利用する側の企業としては、現在のテクノロジーに対してどのように考えているのかを、感じることができました。

もしかしたら、25年前のIT革命と呼ばれた頃と同じか、それ以上に、ビジネスの現場では期待と不安が入り混じっているのかもしれません。

今回取り上げた、特別講演のアイレットの内容にあったように、本当に様々な企業・プロジェクトで、生成AIが使われるようになってきました。一方で、当たり前ですが、失敗の事例もあるでしょう。「同じ業界の某企業が生成AIを導入したけど、上手く使われていないと聞いた」といった話を聞いたり、その結果として、「結局、うちのような変わった業界だと、生成AIなんて役に立たないんだ」と結論付けてしまったりしていないでしょうか。

しかし、それではいけません。IT革命の時に、「うちの企業・業界には、ITなんて役立たないよ」と似たような結論づけをして、結局何年も遅れてIT導入に踏み切って、競争優位を築けなかった企業が、残念ながら日本にはたくさんあります。
一方で、ITを使った新しいチャレンジをして、今や業界のトップランナーとして日本を引っ張っている企業もたくさんあります。

今回、講演を取り上げた2社は、まさにIT革命と呼ばれた頃に創業し、進化していっている企業です。
ぜひ、彼らの話を念頭におきながら、この生成AIというテクノロジーの利用については、自分の会社が業界を引っ張っていくんだ。そういう思いを持っていただければ幸いです。

この記事の著者

レポート NOB DATA株式会社

データサイエンティスト

烏谷 正彦

AI系のスタートアップ企業で、データサイエンティストとしてビッグデータを用いたアナリティクスを提供。現在は、生成AIのソリューションや教育を提供するフリーランスとして活動。最近の趣味は、銭湯に向けてランニングをすること。NOB DATAでは、生成AIまわりのリサーチや情報発信を担当。