レポート
2025.04.23(水) 公開
第9回 AI・人工知能 EXPO参加レポート

今回は、RX Japan株式会社が主催する「NexTech Week 2025【春】」の「第9回 AI・人工知能 EXPO」に参加してきました。

1. はじめに:AIエージェントの急速な広がり
いま、AIエージェントの概念が急速に進化しています。
背景には、2024年末〜2025年にかけて発表された2つの大きな技術的な潮流があります。
ひとつは、Anthropicが提唱したMCP(Model Context Protocol)です。
これは、AIが外部のツールやデータベース、社内システムと安全かつ動的に接続し、あたかも業務ツールの一部として機能するための汎用プロトコル。
MCPを導入したAIは、単なるチャットボットではなく、情報を取りに行き、処理し、アクションまで担う“エージェント”としての役割を果たすことが可能になります。
もう一つは、Googleが発表した「Agent2Agent(A2A)」です。
こちらは、異なるAIエージェント同士が互いの能力を公開し、安全に連携・交渉しながら、協調してタスクを遂行するためのオープンプロトコルです。
エージェント同士が自律的に役割を分担・共有できるようになることで、「一人のAIでは担いきれない業務全体を、複数AIが連携して処理する」未来像が見え始めています。
こうした背景のもと、2025年春の「AI・人工知能EXPO」には、まさに“現場レベルでのAIエージェントの実装と展開”に関する提案が数多く並んでいました。
本レポートでは、生成AIのトレンドが「出力」から「実行」へ、そして「エージェント連携」へと進化するなかで、実務活用がどう進んでいるのかを現場視点でまとめます。
2. 会場の雰囲気
展示会の会場は、東京ビッグサイト東6-7ホール。大規模な展示スペースに所狭しとブースが並び、来場者はビジネスパーソンの中高年男性が中心ながらも、若手・女性の姿も目立ちました。
生成AIが「技術者のもの」から「ビジネス現場の道具」へと移行していることを象徴するような光景です。

3. AIエージェントへの注目
とにかく目立っていたのは、AIエージェントを「業務担当者」「AI社員」として提案するソリューションの多さです。
JAPAN AI AGENTやAVILENなどのブースでは、カスタマーサポート、マーケティング、人事などの業務機能を一括して担う「AI社員」像が明確に打ち出されており、来場者の注目を集めていました。

昨年話題を集めた「議事録作成」や「翻訳」など単機能の生成AIに対し、今年は「自社のデータと連携して業務支援をするAIエージェント」へのシフトが顕著でした。
他にも、exaBase生成AIのブースでは「自社データと統合されたエージェント活用」の仕組みがデモ展示され、会話型UIと業務アプリ連携が注目されていました。

4. 教育・人材支援の注目
また、これは昨年からの引き続きですが、「AIリテラシー」や「生成AI教育」に関するブースも非常に人が多く、AIを導入した企業が次に直面する「使いこなせない問題」が続いていることも印象的でした。

5. 出展企業の傾向と国際勢
昨年は中国系を中心とした海外企業のブースが目立ちましたが、今年は国内企業が大きなブースを展開しており、テーマごとに人が集まりやすい工夫がされていた点が印象的でした。
ただし、ロボティクス関連のブースでは依然として中国企業の存在感が大きく、とくに自律型ロボットやAI搭載ハードウェアの展示には長い行列ができていました。
こうした分野では、依然として技術・価格の両面で海外勢の強さが際立っていました。

6. おわりに:AIは「使うもの」から「働く仲間」へ
今回の展示会で印象に残ったのは、「AI=便利なツール」からAI社員という言葉が出てきているように、「業務を一緒に進めるエージェント(仲間)」へという位置づけの転換です。
そして、それを実現するためには「単機能AIの導入」ではなく、「運用・教育・業務理解」までを含めたトータルな取り組みが求められていると強く感じました。
はじめにで述べた「AIエージェントの急速な広がり」が、まさに展示会でも一部が見られましたし、今後その傾向は強くなっていくことでしょう。
一方で、同じ生成AIであっても、議事録生成のような単機能のAIへの注目が減っていることも留意すべき点です。
生成AIに関する技術の進歩が急速に進んでいる分、どのようなテーマに注目がいくのか・何をユーザーが求めているのかを把握するのが非常に難しくなっているように感じました。
次回以降、さらに業務と一体化したAI活用が進む中で、NOB DATAでもクライアントの現場ニーズに寄り添ったAI導入の支援を進めていきたいと思います。
この記事の著者

データサイエンティスト
烏谷 正彦
AI系のスタートアップ企業で、データサイエンティストとしてビッグデータを用いたアナリティクスを提供。現在は、生成AIのソリューションや教育を提供するフリーランスとして活動。最近の趣味は、銭湯に向けてランニングをすること。NOB DATAでは、生成AIまわりのリサーチや情報発信を担当。
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