レポート

2025.09.24(水) 公開

オートモーティブ ワールド2025秋 参加レポート

レポート NOB DATA株式会社

1. 全体概要

今回は、RX Japan株式会社が主催する「オートモーティブ ワールド2025秋」に参加してきました。

その名の通り、自動車の先端技術分野を企業が展示する一角で、「生成AI World」として切り出されたコーナーがあり、スモールセミナー開催など、生成AIにも力を入れた展示会になっていました。

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今回は、企業展示の様子と、セミナーで語られた製造業における生成AIについてご紹介していきます。

2. 生成AIに関する企業展示の様子

2.1. 「生成AIWorld」での展示

「生成AI World」は、生成AIの最新技術とその実用化事例を幅広く紹介する場として開催されていました。多くの企業ブースが並び、どのブースも多くの来場者で賑わっており、担当者と積極的に意見交換する姿が目立ちました。

展示内容には大きく二つの傾向が見られました。ひとつは、製造設計や品質保証といった現場業務にAIを組み込み、人材不足や効率化の課題を解決する提案です。AIエージェントによる作業支援を具体的に示していました。

もうひとつは、研究開発や業務プロセスのスピードアップを訴求するサービスです。「スピード」や「即応性」をキーワードに掲げ、実務での迅速な導入をアピールしている企業もいました。さらに、業界ごとに特化したAIのカスタマイズ性や、データ可視化などを強調する企業もありました。

来場者の熱量も非常に高く、単なる技術紹介を見物するというよりは、自社の業務や課題にどう適用できるかを真剣に検討している様子が強く感じられました。ブースでの説明を熱心に聞き込み、資料を手に取りながら議論する姿は、このテーマへの期待の大きさを物語っています。

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2.2. それ以外のAIの企業展示

ほかにも、生成AIワールド外でもAIに関する展示は多く見られました。
例えば、人材育成や技術継承を目的に、ベテラン技術者の作業の様子を動画で撮影し、それをもとに作業マニュアルを作成するといった内容の展示は、複数の企業展示で見られ、多くの人が話を聞いていました。
優秀な人材獲得が難しい、ベテラン人材が定年退職を迎える、そういった課題を抱えて悩んでいる人の多さを改めて認識しました。

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また、製造業×AIならではの企業展示として、具体的な製造機器を組み合わせたものが多くありました。例えば、作業時に掛ける眼鏡、部品の質量を量る機器、品質検査の機器などです。
それらをAIと組み合わせることで、人の作業を補助し、生産性や品質を向上していくといった内容に興味を持っている人が多くみられました。

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3. セミナー:「ローカル環境で動く生成AI「ラクラグ」による製造業DXの実践」

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株式会社フツパー

3.1. はじめに

本セミナーは、製造業を中心とした現場業務において、安全かつ実務で使える生成AIをどのように導入し、成果につなげるかを目的として開催されました。株式会社フツパーが提供する、ローカルLLMサービス「ラクラグ」を中心に、セキュリティ、運用、ユースケース、費用対効果について実例を交えながら解説しました。

3.2. ローカルLLM「ラクラグ」の狙いと基本機能

ラクラグは、社内ネットワーク内の完全ローカル環境で動作する対話型の生成AIです。RAG(検索拡張生成)を用いて、社内文書や設計資料、手順書、画像を参照しながら回答を生成します。クラウド送信を行わない構成により、機密情報の流出リスクを低減します。PDFやPowerPoint、画像など多様なファイル形式をそのまま取り込み、RAG用データベースに格納します。回答画面では参照元をトレースでき、根拠に基づく回答を提示します。

3.3. セキュリティとアーキテクチャの要点

最大の特徴はクラウド非接続の完全ローカル運用です。プロンプトや社内文書が外部に送信されないため、情報管理ポリシーが厳格な現場でも導入しやすくなります。アクセス制御では、アップロードしたファイルごとに参照範囲を設定でき、全社公開から部署限定、役職限定まで柔軟に権限管理が可能です。LLMは複数モデルを同一基盤で切り替え・追加でき、将来の新モデル採用にも対応します。

3.4. 製造業における具体的ユースケース

現場の不良品報告書や試験記録、対策履歴を取り込み、特定の試験番号や不具合事象に関する顛末を要約して提示します。過去の横展開や再発防止策を素早く参照でき、熟練者に依存していた暗黙知の検索を平準化します。外観検査や設備点検のナレッジを集約し、図や写真を含む資料から要点を抽出して回答に反映します。バックオフィスでは、就業規則や社内規程、契約書レビューの下読みなどにも活用され、問い合わせ対応の効率化に寄与します。自治体パンフレットのような画像化文字を含む資料でも、画像文字の抽出により正確な参照が可能です。

3.5. おわりに

本取り組みにより、機密情報を外に出さずにRAGを活用できるため、セキュリティ上の制約下でも生成AIの恩恵を受けられます。成果としては、検索時間の短縮、属人化の緩和、根拠提示による意思決定の迅速化が期待できます。今後のチャレンジとしては、各社固有の文書構造や業務ルールへの最適化、モデル進化への継続対応、評価指標の内製化が挙げられます。実データに即した検証と運用設計を進めながら、現場で使い続けられる生成AIの標準化を図っていくことが、今後のテーマです。

4. まとめ:製造業における生成AI

今回の展示・セミナーを通じて強く感じたのは、生成AIの波が製造業にも本格的に押し寄せているということです。展示ブースでは、製造設計や品質保証の現場にAIエージェントを導入する提案や、研究開発を加速させるサービスが数多く紹介されていました。来場者の関心も高く、単なる技術的な関心にとどまらず、自社の現場課題にどう適用できるのかを真剣に議論している様子が目立ちました。

特に製造業では、他の業態以上にセキュリティや信頼性が重視されるため、生成AIの導入においてもクラウド依存型のサービスだけでは不十分であり、ローカルLLMのようなセキュアで閉じた環境での運用が求められていることが印象的でした。これは設計データや生産ノウハウといった機密性の高い情報を扱う製造業ならではの事情であり、生成AIを導入する際に避けて通れない要件だといえます。

今回の展示会を通じて、生成AIの可能性は単なる生産性向上にとどまらず、セキュアな環境で信頼性を担保しながら現場に根付かせることが重要であると学びました。製造業における生成AIの活用は、効率化と安全性の両立をいかに実現するかが鍵となり、その視点を持ちながら導入を進めていくことの重要性を再認識する機会となりました。

NOB DATAでは、これまでも様々な企業に生成AI・AIエージェントに関するシステムや、サービスを導入してきました。
6月号の弊社メールマガジンでお知らせしたとおり、弊社でもローカルLLMを構築した事例を持つなど、製造業などセキュリティなどに心配を持つ企業様の課題に答えるソリューションの提供をいたします。

この記事の著者

レポート NOB DATA株式会社

データサイエンティスト

烏谷 正彦

AI系のスタートアップ企業で、データサイエンティストとしてビッグデータを用いたアナリティクスを提供。現在は、生成AIのソリューションや教育を提供するフリーランスとして活動。最近の趣味は、銭湯に向けてランニングをすること。NOB DATAでは、生成AIまわりのリサーチや情報発信を担当。


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