レポート
2026.01.27(火) 公開
ファクトリーイノベーションWeek2026 参加レポート
1. 全体概要
今回は、RX Japan 合同会社主催の「ファクトリーイノベーション Week2026」に参加してきました。
ファクトリーイノベーション Weekは、製造の「DX化」を実現する「スマート工場 EXPO」、「自動化」を実現する「ロボデックス」、「脱炭素」を実現する「製造業カーボンニュートラル展」、製造業の「人材不足対策」に焦点を当てた「製造業 人手不足対策 EXPO」、「安全・環境改善」に焦点を当てた「工場 安全・環境改善 EXPO」の5展により構成されている製造業向けの展示会です。
今回は、参加した1月22日(木)に行われた特別講演の中から、特に印象に残った2つを取り上げていきます。
2. Robotics x Physical AI ~現場実装の今とこれから~
エヌビディア合同会社
ロボティクス事業部 事業部長
平野 一将 氏
はじめに
本セミナーは、NVIDIAが取り組むロボティクスおよびフィジカルAIの全体像を、製造業や物流の現場実装という観点から分かりやすく解説することを目的として開催されました。GPUやAI技術の詳細な説明に偏るのではなく、現場で今何をすべきか、これから何が求められるのかを軸に、社会課題と技術の関係性を整理する内容となっています。
フィジカルAIが注目される背景
フィジカルAIが注目される背景には、大きく3つの社会課題があります。1つ目は労働力不足であり、特に日本では少子高齢化により労働人口の減少が深刻化しています。これに対応するためには、人の作業をロボットや自動化技術に置き換えることが不可欠となっています。2つ目はオンショアリングの進展で、海外に移転していた工場を国内に戻す動きが欧米を中心に加速しています。この流れの中で、デジタル技術やロボット活用の重要性が高まっています。3つ目はロボットそのものの進化であり、AIの発展によりヒューマノイドを含むロボットの能力が急速に向上している点が挙げられます。
NVIDIAが提供する3つのコンピューティング基盤
NVIDIAはGPUメーカーとして、AIとロボティクスを支える3つのコンピューター基盤を提供しています。第一に、AIやロボットの学習を担うデータセンター向けのコンピューティング基盤があり、大規模なAIモデルの学習を支えています。第二に、シミュレーションやデジタルツイン構築を担う基盤があり、工場や物流拠点の仮想空間での検証を可能にしています。第三に、エッジでAI処理を行うための基盤があり、クラウドに接続せず現場で高速に処理する用途を支えています。NVIDIAはこれらを単体で提供するのではなく、連携させて活用することでAIの進化を加速させています。
デジタルツインによる製造業の変革
オンショアリングを進める上で重要となるのが、工場のデジタルツイン化です。新設工場だけでなく、既存工場を仮想空間に再現し、レイアウト設計や工程シミュレーションを行うことで、立ち上げ期間の短縮や効率化が可能になります。NVIDIAが提供するOmniverseは、CADデータや各種センサー情報、ロボットのシミュレーターなどを統合し、現実に近い動きを仮想空間上で再現できるプラットフォームです。これにより、シミュレーション結果を現実に反映させる「Sim to Real」の実現が容易になります。
物流分野におけるデジタルツイン活用
物流分野では、製造業以上に工程が複雑であり、人とロボットの協調が重要なテーマとなります。倉庫内の人の動きや自動搬送機の挙動をデジタルツイン上で再現し、数値として評価することで、自律的に稼働する倉庫の実現が目指されています。人とロボットが混在する環境を仮想空間で検証することにより、どの工程を自動化すべきかを逆算的に整理できる点が大きな特徴です。
データ整備と段階的な取り組みの重要性
フィジカルAIの実現において最も重要なのはデータです。多くの現場では、設計書や作業手順が紙や属人的なノウハウとして存在しており、そのままではAI活用が困難です。まずは現場に存在する情報をデジタル化し、カメラ映像や作業データを蓄積することが第一歩となります。その上で、デジタルツインを通じてデータを統合し、AIやエージェントに学習させることで、技能継承や自律的な制御が可能になります。いきなり理想形を目指すのではなく、段階的に積み上げる姿勢が重要であると強調されました。
おわりに
本講演では、製造業・物流におけるフィジカルAIの可能性と、その実現に向けた現実的なロードマップが示されました。NVIDIAはGPUだけでなく、オープンプラットフォームとして誰もが触れられる環境を提供し、エコシステム全体で社会実装を進めています。今後のチャレンジとしては、現場データの整備と小さな実証の積み重ねが鍵となり、日本の製造業・物流がAIによって持続的に進化していくための基盤づくりが求められています。
3. ロボットと共に歩むスマート社会: Wellbeingの新たなかたち
川崎重工業 株式会社
社長直轄プロジェクト本部 執行役員 社長直轄プロジェクト本部長
加賀谷 博昭 氏
はじめに
本セミナーは、川崎重工業が長年取り組んできたロボット開発の歴史を振り返りつつ、現在直面している社会課題に対してロボット技術がどのように貢献できるのか、そして今後どのようなスマート社会を目指していくのかを示すことを目的として開催されました。産業用途にとどまらず、医療、介護、災害対応、モビリティといった社会領域にロボットを実装することで、人とロボットが共に生きる未来像を具体的に描く内容となっています。
川崎重工業の事業基盤とロボット開発の歩み
川崎重工業は、陸・海・空にまたがる幅広い事業を展開する総合エンジニアリング企業として、ロボティクス、航空宇宙、鉄道車両、エネルギー、インフラなど社会基盤を支える分野で技術を蓄積してきました。これらの技術を横断的に融合させることで、グローバル市場に競争力のある製品・サービスを提供しています。
1969年には日本初のロボットメーカーとして事業を開始し、当初は自動車や半導体工場向けの産業用ロボットを中心に、生産性向上や効率化を支えてきました。
社会課題に向き合うロボット技術への展開
2000年代以降は、産業用ロボットの技術に通信、IoT、AIを組み合わせ、人と協働するロボットや遠隔操作ロボットの開発を進めてきました。さらに2015年以降は、医療や介護といった社会の現場で実際に役立つソーシャルロボットの社会実装に注力しています。
特に人手不足が深刻化する中で、危険作業や単純作業をロボットが担い、人が本来注力すべき業務に集中できる環境づくりを目指しています。
医療・介護分野におけるロボット活用事例
医療現場では、看護師の移動距離が一日20kmに及ぶケースもあり、業務負担の大きさが課題となっています。配送ロボットの導入により、病院内の物品搬送を自動化し、看護師の移動距離を約30%削減した事例が紹介されました。これにより、医療従事者が患者ケアに集中できる環境が整いつつあります。
また、検体搬送と検査工程をロボットで連携させる実証実験では、既存設備を大きく変更することなく業務プロセスを自動化し、ヒューマンエラー低減と効率化の可能性を示しました。
認知症ケアとコミュニケーションロボット
介護現場では、認知症の方とのコミュニケーションや見守りに多くの時間と労力が必要とされています。川崎重工業では、AIを活用した認知症向けコミュニケーションロボットの実証を進めており、繰り返しの会話にも穏やかに対応する設計が特徴です。
利用者の安心感を高めると同時に、スタッフの精神的・肉体的負担を軽減する効果が確認されており、介護の質と働き方の両立を支える取り組みとして位置付けられています。
ヒューマノイドロボットとフィジカルAI
災害対応やインフラ点検など、人が立ち入りにくい現場に対応するため、ヒューマノイドロボットの開発も進められています。最新モデルでは、認識・判断・行動を一体化したフィジカルAIの考え方を取り入れ、不整地での安定移動や遠隔操作とAIのハイブリッド運用を実現しています。
これにより、危険エリアへの人の立ち入りを最小限に抑えつつ、熟練者のスキルを遠隔から活用できる可能性が広がっています。
移動の自由を広げる新しいモビリティ
ロボティクスとモーターサイクル技術を融合した新しいモビリティのコンセプトも紹介されました。年齢や身体能力に左右されず、誰もが安全に自然の中を移動できる体験を提供することを目指しています。
個人の設定や体験をクラウド上に記録し、世界中どこでも「自分の相棒」と再会できるという構想は、移動そのものを人生の価値を広げる体験へと進化させるものです。
おわりに
本セミナーでは、川崎重工業がロボットを単なる機械ではなく「人の相棒」として社会に実装しようとしている姿勢が一貫して示されました。医療・介護・災害対応・モビリティといった幅広い分野で、既に具体的な成果が生まれつつあります。
今後は、国内外のパートナーと連携しながら、より多様な現場でロボットが人の可能性を広げる存在となることが期待されます。2030年に向けた挑戦を通じて、川崎重工業が描くスマート社会の実現に注目していきたいと感じました。
4. まとめ
製造業の中でも、特にロボットとAIというテーマでの講演に注目しました。
同様に、展示会でも、写真にあるようなAI + ロボットによる具体的なデモンストレーションが多く見られました。
ロボット自体の進化もさることながら、Physical AIという名称で表現されるように、AIとの組み合わせで、様々なタスクを実行する、様々な形状のロボットが生まれてきているのではないかと感じました。
一方で、まだまだ多くの製造業ではロボット×AIを取り入れられていないのが現状ではないでしょうか。講演があったNVIDIA社や川崎重工社の例まではいかずとも、具体的に自社のどの業務で使えるのかを考えるタイミングになっているのではないでしょうか。
検討にあたっては、単なる一過性の設備投資という考え方ではなく、持続的な進化のためにAIをどのように活用していくのか、中長期の目線をもっていくことが重要だということも考えさせられました。
NOB DATAでは、これまでも様々な企業に生成AI・AIエージェントに関するシステムや、サービスを導入してきました。
生成AI・AIエージェントを導入することでクライアント企業様の成長を促していければと思いますので、これからもツールやサービスについてより学びを深めていき、より良い生成AI・AIエージェントに関するシステム・サービスを提供いたします。
この記事の著者
データサイエンティスト
烏谷 正彦
AI系のスタートアップ企業で、データサイエンティストとしてビッグデータを用いたアナリティクスを提供。現在は、生成AIのソリューションや教育を提供するフリーランスとして活動。最近の趣味は、銭湯に向けてランニングをすること。NOB DATAでは、生成AIまわりのリサーチや情報発信を担当。
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