レポート

2026.02.28(土) 公開

AI World 2026 春 東京 参加レポート

レポート NOB DATA株式会社

1. 全体概要

今回は、AI World 実行委員会主催の「AI World 2026 春 東京」に参加してきました。

レポート NOB DATA株式会社

AI World 2026 春 東京は、ビジネス変革・業務効率化を加速する最新のAIソリューションが一堂に集う展示会と題しており、多くの公演・展示が”これからAIを導入しよう”としている企業・ユーザー向けの内容になっているように感じました。

今回は、参加した2月26日(木)に行われた特別講演の中から、特に印象に残った2つを取り上げていきます。

2. 生成AIがもたらすビジネスインパクトと最新トレンド

日本マイクロソフト(株)
業務執行役員 コーポレートソリューション事業本部Azure &AI プラットフォーム統括本部長 
小杉 靖 氏

はじめに

本セミナーは、労働力不足や生産性向上圧力が強まる中で、AIを使って個人の働き方と企業の業務プロセスをどう変えるかを整理し、「フロンティア企業」へ進むための考え方と実例を示すことを目的としていました。

フロンティア企業の考え方と背景

フロンティア企業とは、AIを活用して組織のあり方を根本から再設計し、人の判断力とAIの知能を融合させた新しい組織モデルを先導する企業と説明されました。情報量の増加で仕事は複雑化する一方、企業側は成長と持続のために生産性向上を迫られています。その結果、従業員は時間やエネルギーが不足しがちであり、このギャップを埋める手段としてAI活用が位置づけられていました。

AI活用の3段階とエージェントの例

企業のAI活用は段階的に進むと整理されています。

  • 第一段階:個人の業務を支える「アシスタント」

  • 第二段階:チームに参加して特定タスクを担う「人間主導のエージェント」

  • 第三段階:業務プロセス全体を動かしつつ必要時に人が確認する「人間主導でワークフローを実行するエージェント」

例として、会議で時間配分や進捗を指摘するファシリテーターエージェント、開発でバグ修正案を提示し人が確認して進める支援、入社手続きのような連鎖業務を裏で進めるケースなどが紹介されました。

Microsoft 365 Copilotのデモで示された実務像

Wordに組み込まれたCopilotがメール内容を参照して発注文書を下書きし、人は最終チェックに集中する例が示されました。また、英語文書の内容を音声で問い、日本語で説明させて理解を進める使い方、会議の多言語翻訳、チャットからOutlookの候補日時を作り会議情報を整えるといった、日常業務の負荷を下げる実演が紹介されています。

ガバナンスとセキュリティの重要性

エージェントが増えるほど、機密漏えいや不適切利用などのリスクが高まるため、エージェントにもアイデンティティを持たせて認証・認可を適用し、監査やトレースを可能にする必要があるとされました。さらに機密ラベルと連動し、機密ファイルは要約などを制限できる仕組みが、安心してAIを使う前提になるとのことです。

おわりに

AIは個人の段取り、文書作成、会議運営、調整業務などの負荷を下げ、生産性向上の手段になり得る一方、普及に伴ってガバナンス設計が不可欠になります。技術導入と統制をセットで進め、AIを企業の持続と成長の基盤として組み込むことが、フロンティア企業への道筋として示されました。

3. 生成AI大賞2025 グランプリ受賞コロプラに聞く「成功事例と課題解決のアプローチ」

(株)コロプラ
菅井 健太 氏
上席執行役員 CIO

(一社)Generative AI Japan
國吉 啓介 氏(モデレーター)
発起人/業務執行理事/事務局長
(株)ベネッセコーポレーション
データソリューション部 部長

はじめに

本セミナーは、AIを活用して組織の在り方や事業モデルをどのように再構築していくのか、その実践事例と考え方を共有することを目的として開催されました。単なる技術導入の話ではなく、人間の判断力とAIの知能を融合させた新しい組織モデル、いわゆる「フロンティア企業」としての取り組みを紹介する内容です。AIが急速に進化する中で、企業がどのようにAIと向き合い、どのように活用していくべきかが中心テーマです。

AI進化の変遷とエージェント時代

講演では、ここ数年のAIの進化を振り返りながら、1年目と2年目で何が変わったのかが整理されました。初期は検索やテキスト生成が中心でしたが、現在では画像生成や動画生成など表現領域が広がり、さらにエージェント型AIの登場によって、自律的に判断・実行する世界へと進みつつあります。

AIは単なる効率化ツールではなく、「考える」ことを補助し、人間の創造性を拡張する存在へと進化しています。その結果、ビジネスの在り方そのものが変わり始めているという問題提起がなされました。

現場導入における壁とその乗り越え方

AI導入において最大の壁となるのは、技術そのものではなく、現場の不安や恐怖心であると指摘されました。「どこまで使ってよいのか分からない」「個人情報や著作権は大丈夫なのか」といった懸念が多く寄せられます。

そのため、同社ではガイドラインを整備し、使う人と使わない人の選択を尊重する姿勢を取っています。無理に全員に使わせるのではなく、好奇心を持つ人から活用を広げていくアプローチを採用しています。また、批判や懸念に対しても隠すのではなく、経営として正面から向き合う姿勢を明確にしました。

特に重要なのは、「母親に説明できるレベルで語れるか」という視点です。技術用語ではなく、誰にでも理解できる言葉で目的や意義を説明できることが、組織内の信頼醸成につながると述べられました。

伸びる人材の特徴と組織文化

AI活用において成果を出す人材の特徴として、年齢や技術力よりも「好奇心」が挙げられました。新しいことを試してみたい、できなかったことを実現したいという動機を持つ人が最も成長しやすいとのことです。

AIは、これまで技術的制約やコスト面で実現できなかったアイデアを形にする手段を与えてくれます。そのため、変わりたいという意志を持つ人ほど活用が進みます。組織としても、挑戦を阻害しない雰囲気づくりが重要であり、批判を恐れて止まるのではなく、前提を整理しながら進める姿勢が求められます。

データ整理と基盤整備の重要性

今後のAI活用において鍵となるのは、データ基盤の整備です。AIが高度化するほど、社内にどのようなデータがあり、どこに格納され、誰がアクセスできるのかを整理する必要があります。

現在は社内データを分類し、アクセス権限を明確にしながら、AIが活用しやすい形に整える取り組みを進めているとのことです。AI導入は単発の施策ではなく、組織全体の構造改革であり、データ戦略と不可分であると強調されました。

おわりに

本講演を通じて、AI導入の本質は技術ではなく、組織文化と姿勢にあることが示されました。批判を恐れず、好奇心を尊重し、分かりやすく説明しながら前に進むことが、フロンティア企業への道であるといえます。

成果としては、AIを前提とした競争環境を見据えた組織づくりが着実に進んでおり、今後はデータ基盤の整備を通じてさらなる高度化が期待されます。一方で、著作権や倫理、社内合意形成などの課題も残されています。

それでもなお、AIを活用しないリスクの方が大きいという認識のもと、挑戦を続ける姿勢が示されました。本取り組みは、AI時代における企業変革の実践例として、多くの示唆を与えるものでした。

4. まとめ

最初に述べた通り、普段参加しているセミナー・講演に比べて、”これからAIを導入しよう”とする企業・ユーザー向けの内容が濃くでていました。

既にAIの導入が進んでいる企業にとっては今更と思われる内容かもしれませんが、多くの企業では、これから本格的にAIを普段の業務に役立てていこうというフェーズであり、そういう企業にとっては、どのように進めていくかが参考になるのではないでしょうか。

特に、AIで何をするかという点だけではなく、「AI活用において成果を出す人材」を意識して導入を進めていくということは、既にAIの導入を進めている企業にとってもまだまだ重要な要素ではないでしょうか。

NOB DATAでは、これまでも様々な企業に生成AI・AIエージェントに関するシステムや、サービスを導入してきました。
生成AI・AIエージェントを導入することでクライアント企業様の成長を促していければと思いますので、これからもツールやサービスについてより学びを深めていき、より良い生成AI・AIエージェントに関するシステム・サービスを提供いたします。

この記事の著者

レポート NOB DATA株式会社

データサイエンティスト

烏谷 正彦

AI系のスタートアップ企業で、データサイエンティストとしてビッグデータを用いたアナリティクスを提供。現在は、生成AIのソリューションや教育を提供するフリーランスとして活動。最近の趣味は、銭湯に向けてランニングをすること。NOB DATAでは、生成AIまわりのリサーチや情報発信を担当。